第12話 鎮静

「さて……この子と……一応こいつらも運ぶか……」


 ヴェラは男たちを引き摺り呪文を唱え、鉄の細長い部品を蛇のように動かし、男たちを巻き付けた。


「よし、これで身動きは取れないね……さぁ、移動しよう……全く、こいつら重いったらありゃしない……」


 ヴェラは少女と男たちを運ぼうとしたが……空からの爆発音が聞こえなくなっていることに気が付き、手を止めた。


「……あれ? 隕石……降り止んだ?」


 ……違和感を感じたヴェラは、外の様子を見に行った。

 外は……変わらず騒然としていた。

 しかし、隕石が降りやみ、道端ではそこら中に、国防を担う兵士たちが駆けずり回っていた。

 兵士のうち一人が、ヴェラに気付いて近づいた。


「あ、お嬢ちゃん! 無事かい?」

「お嬢ちゃんじゃないです!! 21歳です!!」

「あ、申し訳ない……それよりも大変だ! あの落ちてきた隕石……あの中から、『兎の耳が生えた人間』が出てきたんだ! しかも奴ら、奇妙なことを口にしながら街を襲い始めたんだ!」

「……え?」


 兎耳の生えた人間……ヴェラには心当たりがあった。

 隕石から出てきた少女と……先ほど襲い掛かってきた男たち。


 (もしかして……あいつらが? じゃああの女の子も?)


 ヴェラは、少女の事が気がかりだった……。


「我々が対処行って何とか鎮静化できているが……この辺りは危険だ! 私が誘導するから避難するぞ!」

「ひ、避難!?」


 兵士がヴェラの手を掴み、避難所へと誘導しようとした……が、ヴェラはその手を放そうと、兵士の手を思いきり叩いた。


「ま、待って! その……建物の中に、えっと……襲い掛かってきた奴らがいます! 私が拘束しました!」

「なんだと!? 本当か!?」

「ええ! それに……連れも中にいるんです!」

「なんてことだ……わかった! 中まで案内してくれ!」

「な、中まで……その……襲い掛かってきた兎の人は、どうするんですか?」

「決まっている! すぐに基地へと連行して、尋問をしてやるんだ!」

「じ、尋問!?」

「ああ! どうしてこんな騒ぎを起こしやがったのか、根掘り葉掘り聞いてやる……もしも答えられないようだったら……」


 ……兵士の口調は、怒りに満ち溢れていた。

 ヴェラは、襲い掛かった男たちが、自分だけではなく、少女も狙っていることに違和感を感じていた。

 ヴェラは、このまま兵士を中に入れては、あの少女も連行されかねない……そう考えた。


「……こっちです!」


ヴェラは兵士を誘導し、商会の中へと招き入れた。


「ここか!?」


 ヴェラは……杖を取り出し、兵士の後頭部に向け、呪文を唱えた。


「……汝、深い眠りにつけ」


 杖から光が放たれ、兵士は顔から倒れて……夢の世界へと旅立った。


「……ごめんね」


 ヴェラは拘束した男たちに猿轡をし、倒れた兵士の前に放り出した。

 そして、格納庫へと戻り、少女の元へと近づいた。

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