第11話 コボルト、始動

 ヴェラは……なんとかして自分とこの少女が助かる方法を考えた、この野蛮人たちの攻撃を避け、なんとかこの場所から去り、隕石からも逃れる方法……。

 考えに考え抜き、ヴェラが思いついたのは……。


「……そうだ!」


 ヴェラは……試作品の前から姿を現し、男たちに向かって叫んだ。


「アンタたち! 女2人に向かって集団で攻撃を仕掛けるなんてほんとサイテー!! これはそんなアンタたちに対する罰よ!!」


 ヴェラは、男たちに宣戦布告し……コボルトの背中に乗り込んだ。


「コボルトちゃん! このサイテーな奴らを思い知らせてやろう! 『……機械よ、我の服従の元、動き給え』……」


 ヴェラが呪文を唱えると……試作品ことコボルトちゃん2号は、自分の意思を持ったかのように、目を開けた。


≪な、なんだ!?≫

≪鉄のバケモノか!?≫

≪クソ! 反乱分子よりも、まずはこの猿を始末するぞ!≫


 男たちは、武器を構え、鉄のコボルトへと近づいた。


「……食らえ!!」


 ヴェラはコボルトを操作し、近づいてきた男たちを砂を払うかのように吹っ飛ばした。

 男たちは壁に叩きつけられ、武器を落とした。


≪なんなんだ、こいつは……≫


 男のうち1人は、気を失い、倒れてしまった。


≪この猿めが!!≫


 1人の男が杖を取り出し、呪文を唱え始めた。


「お? さっきの攻撃する気? させないからね!」


 ヴェラの操縦で、コボルトは屈強な脚で、呪文を唱える男の元へと駆け始めた。

 コボルトが地面を踏むたびに地ならしが起き、男は動揺のあまり、呪文を唱える声が出なくなった。


≪う、うわああああああああ!!≫


 男は再び吹っ飛ばされ……床に叩きつけられ、そのまま気絶した。


≪だ、誰かあああああ!! 助けてええええええええ!!≫


 ……残りの男は、あまりの恐怖に、商会の建物を後にした。


「あら? 逃げちゃうの?」


 ヴェラは男たちが動かなくなったことを確認し、コボルトから降りた。


「よしよし、よく頑張ったね、コボルトちゃん2号」


 ヴェラはコボルトの健闘を称えるかのように、その鋼鉄の体を撫でた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る