第10話 侵入者

 ヴェラは立ち上がり、まずは自分の作業部屋から設計図と模型、そして術式を書き込むための杖を持ってきた。


「我が魔力よ、かの機械の術式を示せ……」


 機械からまるで文字の羅列のように複数の魔法陣が浮かび上がり、ヴェラは設計図を見ながらその魔法陣を一つずつ変えていった。

 一通り術式の改変を終えると今度は格納庫に転がっていた部品類を纏め、試作品の前に置いた。

 持ち運ぶ際、着ている服の裾が引っかかることを考え、下着姿となり、部品を一つずつ並べ、呪文を唱えた。


「鉄の肉体となる者たちよ、かの機械の血肉となれ……」


 部品の中から数個ほど試作品の元へと近づき……達磨落としの如く、部品が交換された。

 建物の外からは変わらず騒々しい音が鳴り響いていたが、それをものともせず、ヴェラは調整を続けた。


「……よし!」


 調整を始めて約1時間、あっという間に試作品の調整を終えた。

 ヴェラは服を再び着替え、少女を抱えて移動しようとした……その時、商会の入り口から、何やら鈍い音が聞こえてきた。

 隕石とは違うその音に、ヴェラは息を殺し、恐る恐る、格納庫の扉に近づき、耳を澄ませた。


≪……反乱分子、どこ行きやがった?≫

≪船が外にあった、この近くに居るはずだ、徹底的に探せ!≫


 ……扉越しに聞こえたその声、それは、ヴェラの耳には外国語のように聞こえた。


「……なんだろう、嫌な予感がする」


 ヴェラは急いで少女に近づき、機械を起動させた……その時、格納庫の扉が、雪崩のように崩れ去った。


「な、なに!?」


 崩れ去った扉から現れたのは……少女と同じ、兎耳の生えた男数人。

 男たちは深緑の作業着のような服を召し、自分らと同じくらいの身長の杖を所持していた。


≪いたぞ! 反乱分子の女だ!≫

≪そこにいる猿はどうする?≫

≪構わねぇ! どうせこの土地は俺らの物だ! 一緒にぶち殺せ!≫


 男たちは、杖をヴェラたちに向け、何やら呪文を唱え始めた。

 杖の先から炎のような魔力が溜まっていき、今にも発射されそうだった。


「ちょ、なになに!? なんなの、勝手に入ってきて!!」


 ヴェラは男たちに怒号を放つも、聞く耳を持っていなかった。


「お話通じない感じ!? ……あぁもう!」


 ヴェラの言い分を返すように、男たちは2人に目掛けて炎を撃ち放った。

 ヴェラは咄嗟に少女を抱え、コボルトちゃん2号を盾にし、咄嗟に攻撃を防いだ。


「ごめんね……コボルトちゃん2号……」


 男たちは続けざまに、外の隕石の如く炎を撃ち放った。


「どうしよう…‥向こうはお話通じないみたいだし、このままじゃ私たち、死んじゃう……」


 ヴェラは考え続けた……この状況を打破する方法を……。


≪このままじゃ埒が明かねぇ!≫

≪ええい! さっさと始末するぞ! 猿も一緒にあの世へ送ってやれ!≫


 男たちは攻撃をやめ、近接武器を取り出し、直接始末する方法へと変えた。

 ヴェラは攻撃が止んだことで冷静になり……試作品越しに後ろを見た。

 男たちは刃物を取り出し、ゆっくりと2人に近づいてきていた。

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