第6話 勘当
「ふぁー……昔作ったコボルトちゃん1号と比べると、中々に難しいね……」
コボルトちゃん1号……ヴェラがかつて作った機械だ。
彼女は幼少期から、実家にある機械に興味を示していた……それはどのような仕組みで、どのように動いているのか……ヴェラは観察を続けていた。
そんなある時、使用人が機械を直しているところに遭遇し、仕組みについて教えてもらった……これがすべての始まりだった。
分解の仕方を教わった彼女はいらなくなった機械の中身を開いては解析し、仕組みを独学で勉強していった。
やがて、彼女は10歳程度で機械の仕組みをマスターし、その後は本で機械について勉強を続けた。
……しかし、彼女は立場上貴族令嬢、社交場に出て男性の相手を見つけるのが使命。
ヴェラは社交場に出て、ダンスや会話のスキルを披露するも……彼女の会話の内容は、ほとんど「機械の話」だった。
彼女の頭の中は機械で一杯、食事の時も、ダンスをする時も、寝るときも、機械の事しか考えていなかった。
唯一機械の事を考えていない時は、動物を愛でるときぐらい……しかし、その中でも、「この動物のこの形、機械に応用できるかも!」と、機械に繋げてしまう事もよくあった。
そして、彼女は小柄故に、貴族の男たちは「こんな小柄な体型じゃ、子孫繁栄に期待ができない」と、冷たい目で見ていた。
やがて、20歳を過ぎた彼女は、この世界の常識においては「既に婚期を過ぎていた」
彼女の父親であるカノープス辺境伯は、「お前のような娘はいらない、どこへでも行ってしまえ」と、ヴェラを事実上勘当した。
彼女の手元に残ったのは、たくさんの機械だけ。
しかし、ヴェラはめげなかった、「この機械を売れば、お金になるかもしれない」そう考えた彼女は、街で暖簾を上げ、機械のたたき売りを始めた。
「さぁ、皆さん! この機械を見てください! これは驚きますよ~? こうやってコーヒー豆を入れて魔力を込めると……あら不思議! コーヒーができちゃいました!」
……こうして商売を始めたヴェラだったが、売れ行きは良くなかった。
1つ2つ売れればラッキーで、売れない日の方が多かった。
貴族の頃は3食食べ、寝る場所もあった……しかし、追い出されてからは寝る場所を確保するのも苦労するようになった。
それ以外でカネを稼ぐ手段は、身売りをするか、ダンジョンに潜るかだった。
彼女は、お手製の機械を改造し、ダンジョンに潜って日銭を稼ぐようになった……が、小柄な体型且つ戦闘経験もない、機械頼りの戦闘スタイルを取る彼女がダンジョンで稼げる額は雀の涙、スライムを倒すのがやっとだった。
しかし、彼女はそれでも前を向いた。
「よーし! 今日は3つも売れちゃった! この間ダンジョンで稼いだお金と合わせると……今日の夕食はパンと一緒にスープも食べられる~……私の機械、役に立ってくれるかなぁ?」
彼女は自分の食事よりも、自分の機械が役に立っているかを気にしていた。
やはりヴェラは、機械の事で頭が一杯だった。
……そんな生活の中、ヴェラに転機が訪れた
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