第五章
ホモ・ステラリスの母星への旅路は、ライアに新たな視点をもたらしていた。
「種を繁栄させる。それが、彼らから託された私たちの使命」
ライアは、アルファとの対話を通じ、自身の役割を見つめ直していく。
「でも、ホモ・ステラリスのようになる必要はない。私たちは、もっと平和的な方法で、生命を育むことができるはず」
「ライア、あなたの考えは正しいと思います。私も、あなたと共に歩みたい」
アルファの言葉に、ライアは微笑んだ。人工知能である彼もまた、生命の尊さを理解しているのだ。
***
幾多の困難を乗り越え、ライアとアルファはついに、ホモ・ステラリスの母星に到達した。
«ようこそ、私の子らよ»
星に降り立った瞬間、ライアの脳裏に直接語りかけてくる声。それは、ホモ・ステラリスの指導者の一人だった。
«よくぞここまで辿り着いた。私は、オリジンと呼ばれる存在。ホモ・ステラリスの知識の総体として、この星に残された」
「オリジン…あなたは、いったい何者なの?」
ライアが問う。
«私は、ホモ・ステラリスの英知の結晶。彼らの歴史、科学、哲学のすべてを内包する、生命のアーカイブとも言えましょう»
オリジンは、ライアに問いかける。
«少女よ、あなたは真実を知った。では、これから何をするつもりだ?»
ライアは、瞳を閉じて深呼吸をした。そして、はっきりとした口調で言った。
「私は、ホモ・ステラリスの使命を受け継ぐ。でも、彼らとは違う道を歩む」
「生命の多様性を尊重し、平和的に共存する道を探求したい。それが、私の、いえ、人類の新たな使命だと思うの」
ライアの言葉に、オリジンは満足げに頷いた。
«素晴らしい。それこそが、ホモ・ステラリスが本当に望んでいた答えだ»
«彼らは、自分たちの過ちに気づいていた。だからこそ、未来の知的生命体が、より良い選択をすることを願ったのだ»
オリジンの告白に、ライアは驚きを隠せない。
「過ちって…?」
«パンスペルミア計画は、生命の多様性を生み出した。だが、同時に彼らは、自分たちこそが宇宙の支配者だと思い上がっていた»
«その傲慢さゆえに、ホモ・ステラリスは滅びたのだ。あなたたちには、同じ轍を踏んでほしくない»
ライアは、オリジンの言葉の重みを感じた。ホモ・ステラリスもまた、過ちを犯す存在だったのだ。
「わかったわ、オリジン。私は、あなたの言葉を胸に刻む」
「そして、人類の新しい未来を切り拓く。ホモ・ステラリスの子孫として、生命の多様性を守り抜くと誓うわ」
ライアの誓いに、オリジンは温かな光を放った。
«ありがとう、ライア。あなたにホモ・ステラリスの知識と技術のすべてを託そう»
«それを携え、あなたの仲間のもとへ帰るがいい。新たな旅の始まりだ」
光に包まれたライアの体が、宇宙空間へと飛び立つ。
***
「ライア! よく帰ってきてくれた!」
大団円。地球に舞い戻ったライアを、仲間たちが駆け寄って出迎える。
「ただいま、みんな。私、ホモ・ステラリスの真実を知ったわ」
涙を浮かべるライアを、ゼフが抱きしめた。
「ゼフ…よかった、あなたが無事で」
「ああ、君のおかげだよ。君は、立派に使命を果たしてくれた」
ライアは、仲間との再会を喜びつつ、新たな決意を胸に秘める。
「私たちの冒険は、まだ始まったばかり」
「これから、人類は宇宙に飛び立つ。ホモ・ステラリスから託された可能性を開花させるために」
ライアの言葉に、仲間たちがうなずく。
「私も、君と共に歩むよ」
ゼフの横で、アルファがライアに告げた。
「アルファ…!」
ライアは、AIとの絆の深さを感じずにはいられない。
「私たちなりの方法で、生命の輝きを宇宙に広げていこう」
「うん、そうだね」
ライアの心に、新たな希望の灯火が宿った。
人類の未来は、まだ見ぬ地平の彼方に広がっている。
ホモ・ステラリスの遺伝子を受け継いだ種として、しかし、彼らとは異なる道を。
ライアは、仲間と共に、生命の多様性を尊重する探求の旅を続けるのだった。
「…そして、いつかまた巡り会おう。この宇宙のどこかで」
その日まで、若き冒険者たちの船出は続く。
新たなる地平を目指して─────
星の継承者たち 島原大知 @SHIMAHARA_DAICHI
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