第53話 閑話休題 クリスティアーネの誓い 2


 私は傭兵をかき集め、故郷へ向かっていた。

 ロッテルダムのアインス商会からの武器も多数揃えていた。

 父の跡を継いだ弟のルイトポルトが領地、領民を護っているはずだ。

 早く、物資と傭兵を届けなくては!

 そう急いでいるのだけれど、傭兵どもが、「やれ船酔いだ!」とか言って休憩を要求してくる。


 私は、少しでも早く、駆けつけたいのだけれども……



 ようやくのことで、実家に戻ることが出来た。


「遅くなって、申し訳ないわ」

「姉上様」と、弟の妻が出迎えてくれた。

「ルイトポルトは?」

「はい、ハイデルベルク城へ応援に」

「そう、宮中伯様のところへ……」

 内心、安心した。

 難攻不落の要塞、ハイデルベルク城なら、無事に決まっている。


「ミーナか?」と、父の声が聞こえてきた。

「父上、ロッテルダムから馳せ参じました」

 私は、父上に武器に物資、傭兵を連れてきたことを説明した。

「そうか。なら、領地、領民の護衛を頼めるか」

「もちろんですわ、父上」

 そうして、私は、この故郷を護るつもりでいたのだが、ハイデルベルク城が攻められていると連絡を受け、不安になった。


 まさか、我が弟が……ということはあるまい。

 ここには、甥と姪がいるのだぞ。


 何といっても、ハイデルベルク城は、山にそびえ立つ巨大要塞。

 簡単には落とされはしないはず。


 だが、それは偶然だったのかもしれない。

 落雷による大火事が城内で起こった。


 ハイデルベルク城は、嘗てないほど、傷ついた。

 城壁には、砲弾が撃ち込まれ、崩れかけている。

「父上、ここは私もハイデルベルク城へ向かいます」

 父上は、答えられなかった。

「戦力がありながら、出さなかったとなれば、他の領主からなんと言われるか……」

「なら、私が行こう」

「いえ、ここは、独り身の私に」と、言うと甥と姪の顔を見た。

「いつもいつも親不孝をして申し訳ございません。父上も、この子達も未来のラインラントには必要なのです」と言うと、父は私を抱きしめていた。

 部下がいるにも関わらず。


 私は出撃した。


 そして、敵の傭兵部隊を蹴散らし、ハイデルベルクへ侵攻した。

 ハイデルベルクで最初に出くわした部隊は、モッテ家の部隊だった。

 それは、我が友人、クリスティアーネの実家の部隊だ。




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