第48話 ダブリン市民の憂鬱 3


 ヴィレムは、この街で“はじめて”を迎えようとしていた。

「えっ、いや、ボクは……」


 すると、ヘニーは我慢できない様子で「すまんな、オレは先に行かせてもらうぜ」と、ある娼館へと足を向けた。ケツのデカい女でも見つけたのだろう。


「おい、ヴィレム。どの店にするか決まったか

?」

「ファースさん、いえ、その……」

 しばらく、ファースは考えた……


「なんだ、ヴィレム。そういう事か。そういう事なのか」と、笑い出した。


「なら、娼館の二階を借りようじゃないか」

「えっ?」


 そして、ファースはヴィレムの肩を抱えて、ある娼館へと歩き出した。


「はい、いらっしゃい」

「あぁ、部屋を頼む」

「……男同士かい?」

「そうだが、何か?」

「最近、取締りがあってね。オススメはしないよ」

「取締り? まあ、なんでも良いよ。部屋を、部屋を貸してくれ」

「ファースさん、二人で何を?」


「おや、この子。全くわかってないじゃないか」



 すると、客の一人が近寄ってきた。

「詳しい話を聞かせてもらおうかな」と。

 さらに、後ろからも、もう一人、さらに一人と、近寄ってきた。


「あんたらは、何者なんだ」

「ダブリン警察署の者だ」と、私服警官達はファースを警察署へと連れ去っていった。


 一人残されたヴィレム……


「あんたは、楽しんでいくかい?」と、受付の年配の女が声を掛けてきた。

「い、いえ、追い掛けて行きます」

「まあ、そう言わずに」と、先まで私服警官の相手をしていた娼婦が、ヴィレムを部屋へと連れ去っていった。



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