第47話 ダブリン市民の憂鬱 2


 一等航海士のファースは言った。

「オレは、ダブリンのことはよく知っている」と。

 だから、ヘニー副船長は答えた。

「じゃあ、楽しい所も知っているのか」と。


 そして、二人の男はニヤリとし、頷いた。

「では、ファース。お願いするよ」

「任せてもらいましょう」


 そこに、ヴィレムが通りかかった。

「どうしたんです? 楽しそうですね」


「あぁ、ヴィレムぅ。これから楽しくなるのさ」

「そうだ」

 少しうらやましくなったヴィレムは聞いてしまったのだ。

「これから何があるのですか」と。


 二人は笑い合っている。

「いや、船長が上陸しても良いって言うから、ちょっと」

「なら、ボクも行きますよ」


 また、二人は笑い合った。

「そうだな。ヴィレムも、そろそろだろうしな」

「そうですね。良いんじゃないかな。ただし、おカネはたっぷり持って来いよ」

「えっ、なんですか」


 そして、太陽が傾き夜が訪れる少し前。

 三人は来たのだ。

 テンプル・バーに。


 そう、音楽と酒の聖地、テンプル・バーに!


 イングランドのパブとは、また違う飲み方をしている。アイリッシュミュージックなるものをライブ演奏し、それを聞きながら酒を楽しんでいる。

 だが、アイルランド語はヴィレムには、さっぱりわからなかったので、歌の歌詞などは理解できなかった。


 そして、ほどほどに酔った後は……

 そう、男の聖地へ!


「ヘニー副船長は、どんな相手が好みで」

「オレか? オレはケツのデカい女が好きだな。ファースは、どんな相手が好みだ」

「まあ、それは……ところで、ヴィレムは、どんな女が好きなんだ」

「えっ、ボクですか。いや、その……」

 なんと、ヘニーとファースの楽しみは花街、いや風俗街だった。


 ヴィレムの“はじめて”はどうなる?

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