第37話 ブルームエレガンス商会 2
海上警察に囲まれた。
クリッパー船の周りに警察官が数十人とおり、クリッパー船から下船できない。
「この船が密輸、あるいは違法物を所持していると通報があった。調べさせてもらう」と言う。
別段、違法物など運んではいないが、積荷が無いわけではない。
そう、ムンバイに運んでいる医薬品だ。
医薬品など、どうとでも難癖をつけることが出来る。
「まずいな」とは、操舵手のカスペルだ。
「それに船内を荒らされては、気持ちの良いものではないし」
海軍艦を蹴散らしてきたのに、海上警察ごときに……
「時間もない、船長。早くしてもらおう」
「わかった。正しだ。条件がある」
「なに?」
「五人までだ。それ以上の乗船は認めない」
「なぜだ」
「おかしいからだ。この船がここに入港することを決めたのは、つい一時間と前ではない。なのに、通報があったこと自体おかしい。何かをするつもりだろう」
「……」
確かにと、隊長らしき男は思った。
「だから、五人に絞り、こちらの船員が一人一人に同行させてもらう」
クリッパー船は28人から30人と少ない人数で航行が可能だが、数が少ないとこのような時、人手が足らない。なので、五人までとした。
「五人いれば、十分ではないだろか」
「わかった。では、少し待て」と、隊長は人選をするようだ。
これを、建物の三階から見ていたジョルジェットは、苛立ったようだ。
「マズいわね」と。
人選が行われ、クリッパー船からタラップが下ろされ、選ばれた五人がデッキに並んだ。
「船長、積荷は?」
「医薬品です。インドまで」
「インドですか。逆方向ですね。それはおかしいのでは」
「理由は話せません」
五人が積荷を調べるのに、船員たちが配置に付いて見張をしていた。
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