第36話 ブルームエレガンス商会 1
ジャスミンのリバースは収まることなく、海の魚に餌やりを続けていた。
――食い過ぎなんだよ。
とは言わず、ヴィレム達は背中をさすってやることにした。
だが、世の中、無神経にもはっきりと言ってしまう者も一人はいる。
「朝から、食べ過ぎなんだよ。飯は、働いてから喰うものだよ」と言ったのは、女コックのドロアテだ。
女船員とは珍しいかもしれないが、何か目当てでもあるらしく船に乗り込んでいる。
すると、船長から「エディンバラに入港する」ことが告げられた。
これでジャスミンも少しは良くなるだろうか。
砲台を構えた城塞をいくつも通り過ぎて港に入港する。
この港も砲台が装備されており、軍港という感じだ。
そして、我らのクリッパー船は港に着いたのだが、事務手続きを行っている間は、上陸はせず待つことにした。
「あぁぁ、ヘニー副船長」とファースが言った。
「なんだ、ファース……」
「隣は軍艦ですよね。あっちも軍艦」
「おかしいな。軍艦と民間船が同じ突堤とは」
「何かありますよね、何か」
しばらくして船長が港湾事務所から帰って来た。
「どうでした。船長」
「突然の入港だったので、管制官から一言ぐらいあると思っていたのだが、何もなかった」
「積み下ろしが無いので、儲からないから? それとも、逆でしょうか」
「わからんが、次の船が4時間後に入るらしいので、3時間の滞在ですませよと言っている」
「だそうだ、ジャスミン」
「う、う、うん……」
「これは重症だな」と、ファースは笑い出した。
***
「見えるよ」と言ったのはフランス出身の女だった。
「出港を遅らせれば良いのか」
「そうだ」
「わかった。やってみよう」と、そう言うとその女は港湾事務所に向かった。
事務所に入ると、職員が出迎えた。
「おはようございます。ジョルジェットさん」
「おはようございます。ちょっと気になることが、ございましてね……」
「なんですって、ジョルジェットさん」
「おかしいと思いませんか、事務長」
「まったくその通りです。ティーレースに参加しているティー・クリッパー船が目的地と反対方向のエディンバラに立ち寄るなんてことはありません。しかも、オランダ国籍の船ですからね。密輸や違法物を所持しているかもしれません」
「事務長、これは保安担当と話し合って、直ちにお調べください」
「わ、わかりました」
しばらくして。
"Sleu
「この船に密輸の疑いが掛けられている。調べさせて頂こう」と。
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