第30話 テスト航行


 進水式が終わると、クリッパー船のテスト航海が始まった。

 工場初の試みであるウィンドジャマーだ。

 しかも、竜骨も初のつぎはぎだ。

「まっすぐ進むのか。大丈夫なのか」といった具合に、皆、心配をしている。


 不具合はすぐに修正し、テストを繰り返し、操舵も問題なく終えようとしていた。


 だが、工場長は、

「他のドックで鉄のつぎはぎは交換できないし、部品も調達できない。うちの職人が必要ではないのか」と。

「工場長、それは……」

「うちの工員を連れて行くと良い。ジャスミン、お前がこの船に乗り込め」

「工場長……」

 実は、ジャスミンは口癖のように「この船に乗ってみたい」と言っていたのだ。

「鉄は、今までの船大工では整備できない。だが、鍛冶職人がいれば、何とかなる。鍛冶作業が出来るようにもしてある」


 それを見ていたヴィレムが、どう思ったのだろうか。

 今度は、船酔いでうるさくなるのだろうなぁ……と思ったかどうか。


 そして、いよいよ、ロンドンに向けて出航する。


 港の中では、はしけ(タグボート)に曳いてもらい、外海に出る。

 そこで、テムズ川下流まで自力航行し、また、テムズ川で艀に繋いでロンドン港まで遡ることになっている。


 ドックで積荷を載せれば、いよいよ、アジアへ向けて出航である。


 ハインリッヒ船長、ヘニー副船長、ヴィレム、ジャスミン……

 それぞれの想いを載せ、クリッパー船はドーバー港からロンドンへ向かう。



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