第22話 奪われた下着



「盗まれた下着を探し求めて……」と、歌いながらカロリーネが部屋に戻ってきた。


「カロリーネ、何をバカなことを言っているのです」

「そうだよ」

 会長夫人とヴィレムの突っ込みも気にする様子もない、女使用人のカロリーネ。


「まあ、ワタクシはボウちゃまの下着を盗んだのでなく、手直しをして差し上げたのですわ」


 女達が騒いでいるので、会長達が「どうした?」と、寄ってきた。


「なんと!」


「会長様、可愛いですよね」

 なんと、ヴィレムのステテコが女物の下着のようにリボンなどが、付けられていた。

 しかも、フワッとしている。

 まるで、ドロワーズのように。


「カロリーネ、何故、こんなことをしたの」

「ワタクシは、ボウちゃまに、また、女装を頂きたいのですわ」

 それを見ていた会長は、何も言わず、後ずさりをして部屋から出て行ったのだった……



 ということで、ヴィレムはドレスから普段の水夫の姿に戻ったが、下着は女物しかなく、ズボンの下はドロワーズという、危険な状態でライン川を下ることになった。


「カロリーネッ」

「はい、会長様」

「なんでヴィレムの下着に、いたずらをしたのだ?」

「それは、会長様がボウちゃま達に支援しないと言うことを聞いたので、気を紛らわすためですわ。ボウちゃまと元気無くお分かれするのは、イヤですから」

「そうか……でも、しかしだな……」

 と、会長が言うも、カロリーネは踊るかのよう笑い出した。



 さて、タグボートには、一人の水夫が見張りに残っていた。

「支店長、お帰りなさい。支援金はどうでしたか」

「いや、一部しか受け取れなかった。しかもキャンセル料とな」

「では、フィッツジェラルド氏に、早く伝えないと」

「そういうことだ。急いでくれ」



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