第19話 カロリーネの趣味
その頃、ヴィレムは、数年ぶりに使用人達と話をしていた。
近海だけでなく、大西洋を渡り、アメリカへ行ったことなどを、さも武勇伝の如く話していた。
すると、ある女性使用人が、
「まあ、すっかりたくましくなって……昔は女の子の姿をさせられていましたのに」と言った。
なんのことだろうか?
会長がヴィレムをここラインラントに連れてきた際、しきたりか何かで、七歳になるまで、女の子の服を着せていたのだ。
「悪魔にさらわれでもしたら……」と。
そう、悪魔祓いは地域差はあれど、似たようなことはしている。
西洋に於いて、誕生日パーティとは、悪魔に子供をさらわれないためにする行事だったりする。
「ヴィレム様、久しぶりに女の子の姿になりませんか」と、その使用人は楽しんでいたが、折角の武勇伝が台無しにされてしまったので、ヴィレムとしては、オカンムリだ!
「もう! カロリーネったら、何を言っているのだい」
「照れたところも、可愛いですわ」
と、話は通じなさそうであった。
しばらくして、会長達、四人が応接間にやって来た。
「ヴィレムや。久しぶりに私達と……」
「ヴィレム……」と、支店長が驚いている。
会長夫人は、「カロリーネッ」と使用人の名をよんだ。
そこには、まるで年頃のお嬢さんに扮したヴィレムがいたからだ。
「ヴィレミーナ様の頃を思い出しましたわ」とは、カロリーネだ。
そう、ヴィレムは七歳まで、ヴィレミーナと名乗り女の子に扮していたのだ。
小柄で中性的なヴィレムは、お嬢さんに見えないでもなかった。
男達と会長夫人の四人は様々なことを考えていたのだろうが、ヴィレムは一言も発することはなかった。
ただ、女使用人カロリーネだけは、異様に盛り上がっていた。
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