【リメイク前】あーあ、隕石でも落ちてこないかな②

■分岐1


B:A。

A:え?

B:A。私がBなら、あんたはAなんでしょ。

A:うん…そうだね!さっすがB。ABコンビの絆は鋼鉄ワイヤーロープのように、固く、太い…!それこそ、例え切ろうと思っても切れないくらいに

B:もうちょっとかわいい例えない?

A:えー、もう一人のボク?

B:元ネタァ…。古いけど、ま、ワイヤーロープよりマシか。もういい時間だから、寝るよー。

A:はーい。お休み、B。

B:お休み。


翌朝。


A:宿題、ありがとうね、B!

B:どういたしまして。もうギリギリまで宿題放置すんのやめなよね。

A:はーい。あ、そうだ。Bって今日は駅のほう行くんだっけ。方向同じだし、途中まで一緒に行かない?お礼に、駅前のスタバで、新作ごちそうさせて。

B:気にしないでいいのに。

A:いやいや、B先生、これからもウチの宿題をよろしく頼みますよ。

B:何わけわかんないこと言ってんの。宿題は自分でやりな。でもたまにはスタバもいいね。…ちょっと待ってて。


B、鞄と上着を取り、玄関の鍵をかける。

二人、並んで歩く。住宅街をぬけ、市街地に入る。

大きな道路が走っており、信号は遠い。歩道橋の階段を昇る。



A:夏休み、終わるねー。

B:ほんと、あっという間だったね。A、怪我はもう大丈夫なんだよね?

A:うん。見ての通り元気だよ!

B:そっか。よかった。A、毎年体育祭楽しみにしてるもんね。

A:いやー、Bは私のことよく知ってるね。

B:ふふ、何せあたしは「もう一人のボク」らしいからね?

A:はは…


B、Aのほうを振り返り笑う。それと同時に、Bの身体が宙を舞う。


B:え?


一瞬、静止したかのように見えたそれは、次の瞬間にはどたどたと重い音をたてて階下へ転がってゆく。


B:A、なんで…


B:(N)Aが、こちらを見ていた。顔は見えない。…嘘だ。本当は見えている。

B:(N)呆然と自分の手を見るA。一拍の後、泣いてるような、笑っているような、感情がぐちゃぐちゃになったような顔をする。


B:A…

A:わたし、Aじゃない。Aじゃ…私は…



B:(N)私が覚えているのはそこまで。気が付くと、私は病院にいた。両親は慌てて出張を切り上げて帰ってきてくれたらしい。目を覚ました私を抱きしめて、泣いてくれた。

B:(N)私は歩道橋から落ちて、全身打撲と、頭を5針縫ったらしい。3日眠っていたとか。高校生くらいの女の子の通報で駆け付けた救急車によって、私は病院に運ばれたと。


B:お父さん、お母さん、Aは…?

母:A?…Aって、誰かしら?

B:え、何言ってるの、A…ルリだよ。同じ名前の、クラスメート。うちでお泊り会していいって、この間相談したでしょ…?

母:お泊り会?なんのこと?


B:(N)わけが分からなかった。退院して、私は走って家に帰った。通学リュックに入った定期券をとり、自転車のペダルをこぐ。Aの家にいこう。そう思った。


B:あれ、Aの家ってどこだっけ?Aの苗字は?


B:(N)何も分からなくなっていた。おかしい。わけが分からなくて、混乱した私は、気が付くとあの歩道橋の前にいた。


B:ルリ…どこにいるの?

B:(N)歩道橋の横に、花束とジュースが備えてある。


B:あの、これって…

通行人:ああ、この間、ここで飛び降りがあったのよ。名前は…だれだったかしら。

B:飛び降り…?


B:(N)花束を見る。この間はこんなものは無かったと思うが…


B:あれ、私、何しに来たんだっけ。


B、首をかしげるが思い出せない。


B:そうだ、たまにはスタバに行こうって言ってたんだっけ。新作、楽しみだなあって…あたしはそこまでフラペチーノ好きじゃないけど…なんで、行こうと思ったんだっけ。


B:(N)ぽっかりと、心に穴が開いたような気がする。心の中の半分が、急になくなってしまったような。首をかしげる。…あれ、もう何も感じない。何だったんだろう。


B:ルリ…ルリ…。なんでだろう、言わなきゃって…。


花束の中から、風にさらわれた青い花びらがBの頬を撫でる。Bは花びらに気づかず、歩き去る。


<ED:私を忘れないで>

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