第5章 夢と現実の架け橋

ネイディアンとの和平交渉から3年。

ミナは夢と現実を繋ぐ研究に没頭する日々を送っていた。

カイトの知識を借り、ドリームダイバーを改良し、夢の世界と現実世界を行き来できるようにしたのだ。

「ミナ博士、ついに完成ですね」

リズが感動に震える声を上げる。

「ええ、これで私たちは夢の世界に自由に入れるようになる。そして、ネイディアンとも共存できるはずよ」

ミナは誇らしげに微笑んだ。

かつて夢の住人となったカイトも、これなら現実に戻ってこられるだろう。

「だが、これはあくまで個人で使うものだ。夢の力を悪用されてはならない」

レイブンが厳しい表情で念を押す。

「ええ、分かっています。夢と現実のバランスは、私たちで管理していかなくてはいけませんから」

ミナはドリームダイバーに手を添えた。

ついに、アストレアに真の平和が訪れるときが来たのだ。

その時、研究室に1本の通信が入った。

「緊急事態発生!ドクター・ヤングがドリームダイバーを奪取し、ネイディアンの聖域に侵入しました!」

リズが悲鳴のような声を上げる。

ヤングは、かつてネイディアンと通じていた科学者だ。

彼は夢の力を我が物にし、支配者となることを目論んでいたのだ。

「私が行って、ヤングを止めます」

ミナは新型のドリームダイバーに飛び乗ると、夢の世界へと転送した。

ネイディアンの聖域は、青白い光に包まれた神秘的な空間だった。

そのどこかで、ネーヴェの魂が脈動している。

「ヤング博士、やめて!夢の力を私物化してはいけない!」

ミナは叫ぶ。

「愚かな娘よ、私は夢の力を手に入れ、アストレアの王となるのだ!」

ヤングの姿が、巨大な宮殿の玉座に現れた。

「私がネイディアンを支配すれば、夢も現実も全て思いのままだ!」

そう言ってヤングが両手を掲げると、聖域が悪夢のように歪み始める。

「ヤング、それ以上ネイディアンを冒涜するな!」

ミナの脳裏でカイトの魂が怒りに震えた。

ミナはカイトの力を借り、自らの精神をヤングにぶつける。

「私は夢と現実の調和を信じる!たとえそれが理想郷でなくとも、私たちは現実を生きるしかないのよ!」

ミナの意志がヤングを圧倒する。

「そんな、馬鹿な!私の野望が・・・」

ヤングは苦しげに呻きながら、力尽きていった。

「ネイディアンの神よ、どうかヤングを赦して下さい。彼も夢に溺れた哀れな人間なのです」

ミナは祈りを捧げる。

すると、聖域が温かな光に包まれ、ヤングの体が現実世界へと帰っていった。

「よく分かったな、若き人間よ」

ネーヴェの声が聖域に響く。

「夢は現実逃避の場ではない。現実世界を豊かにする源泉なのだ」

「ええ、ネーヴェ様。私たちは夢から学び、現実を生きていきます」

ミナは心に誓った。

夢と現実は決して乖離したものではない。

両者は表裏一体であり、共に歩んでいくべきなのだ。

「ミナよ、君なら夢と現実の架け橋になれる」

カイトの言葉が、ミナの中に染み渡っていく。

「カイト、あなたと一緒なら、私はどんな困難も乗り越えられる」

ミナはそっと目を閉じ、カイトの面影を思い浮かべる。

2人の魂は永遠に結ばれているのだ。

ミナが夢の世界から目覚めると、そこにはレイブンとリズが待っていた。

「ミナ、やりましたね!ヤングを説得できたんですね!」

「私1人の力ではありません。皆が夢と現実の調和を信じた結果よ」

ミナは仲間たちと抱き合い、喜びを分かち合った。


あれから幾星霜。

ミナはネイディアンとの架け橋となり、夢の力を現実世界に活かす方法を広めていった。

アストレアの人々は、夢から創造性を学び、現実を豊かに生きる術を身につけたのだ。

時折、夢の世界でカイトと語らうミナ。

2人の絆は、夢と現実を超えて、永遠に続いていく。

「カイト、あなたは私の夢であり、現実なのよ」

ミナは満ち足りた表情で微笑むのだった。


夢は現実を彩り、現実は夢を育む。

世界が調和に満ちていく中で、人類は新たな一歩を踏み出すのだった。


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夢と現実の彼方に 島原大知 @SHIMAHARA_DAICHI

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