第4章 ネイディアンとの邂逅
再び夢の世界に辿り着いたミナは、そこが以前とは全く異なる空間になっていることに気が付いた。
かつての美しい花畑も、憧れの街並みも、もはや見る影もない。
そこにあるのは、どこまでも続く真っ白な虚空だけだ。
ミナは一人、果てしない白の世界をさまよった。
「ネイディアンの神よ、どうか私に会って下さい。人類を代表して、お話ししたいのです」
ミナは手を合わせ、祈るように呟く。
「人間の子よ、よくぞ参った」
虚空の彼方から、雷鳴のような声が響いた。
次の瞬間、ミナの前に一人の老婆が現れる。
長い白髪を腰まで垂らし、深い皺に刻まれた紫色の瞳を持つ女性だ。
「私はネイディアンの長老、ネーヴェ・ルーナ。私たちの怒りを鎮めるため、ここまで来たのだな?」
ミナは畏怖の念を抑え、ネーヴェに向き直った。
「ネイディアンの民よ、どうか私たち人類に和解のチャンスをお与え下さい。確かに私たちは夢の力に溺れ、あなた方の世界を冒涜してきました。それは大いなる過ちでした」
「過ちを認めるだけでは、私たちの怒りは収まらぬ。我らが築いた夢の秩序を、人間どもが破壊したのだ」
ネーヴェの紫の瞳が、憤怒に燃え上がる。
「あなた方の夢の力を、私たちは決して忘れません。夢から学んだ創造性や想像力は、私たち人類の希望です。だからこそ、夢と現実の調和を目指したい。どうかその方法を、教えて下さい」
ミナは必死に訴える。
「夢と現実の調和だと?だが、それはあまりに難しい。我らですら、その秘儀を忘れかけているのだ」
ネーヴェが顎に手をあてて唸る。
「もしその方法を思い出せたら、あなた方にもチャンスを与えよう。だがそれまでは、人間を夢から締め出すしかあるまい」
「お願いします、ネーヴェ様。私たちに時間をください。必ずや夢と現実の架け橋となる道を見つけ出します」
ミナは土下座をして哀願した。
ネーヴェは長い間、沈黙していたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「よかろう。人間の子よ、私はお前の決意を信じよう。だが、もし約束が守られぬようなことがあれば、二度と夢の世界に入ることは叶わぬぞ」
「ありがとうございます、ネーヴェ様」
ミナは感謝の言葉を口にする。
「お前には、夢の番人となった青年の魂が憑依している。恐らく、彼がお前に助言をするだろう。その言葉に耳を澄ませ、夢と現実の秘儀を見出すのだ」
そう告げると、ネーヴェの姿は再び光の粒となって、虚空の彼方へと飛んでいった。
ミナの使命は、夢と現実の架け橋を見つけることだ。
そのためには、カイトの魂と一つになる必要があるのかもしれない。
ミナは目を閉じ、恋人の面影を思い浮かべる。
「カイト、あなたの知恵を貸して下さい。私たちはきっと、新しい世界を築くことができる」
そのとき、ミナの脳裏に直接語りかけてくる声があった。
「ミナ、僕はもうこの世界の一部となった。君と共に夢を見続け、現実を見つめ続ける」
カイトの魂は、ミナと融合したのだ。
ミナは静かに瞼を開く。
カイトを失った悲しみは癒えることはないが、その魂は永遠にミナと共にある。
これからは、カイトの知恵を借りて、夢と現実の架け橋を築いていくのだ。
ミナの意識が現実へと戻る。
目覚めた彼女を出迎えたのは、レイブンとリズの期待に満ちた眼差しだった。
「ネイディアンと話はつきましたか?」
「ええ、一時の休戦は取り付けました。その間に、私たちは夢と現実の調和点を見出さなくては」
ミナの言葉に、2人は安堵のため息をつく。
「それは、並大抵のことではありませんね」
「ええ。でも、私にはカイトの力があります。きっと道は開けるわ」
ミナは空を仰ぎ、大きく息を吸い込んだ。
夢の中だけでなく、現実世界でもカイトと生きていける。
そう信じることが、ミナの心に希望を与えてくれるのだった。
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