第1話 気づきからの絶望……刀

「あっ!」


 雷のような一撃に、とりもどす。

 そうだ、俺は!


 迫りくる一撃は鋭い、かわすことのできない近間の距離だ。

 とっさに思いだした受け流しへと態勢を転化させていく。

 一撃を受け流す!

 剣をねかせ、反りを利用し流しさばく!


 剣が俺の剣にぶつかった。

 キツイ、衝撃が手につたわる。

 ちがう! 流せない。

 しかも柄がすべって、安定が悪い!!

 剣身は直撃している。

 

 バキッ!


「へっ?」


 ビビが広がっていく、おかしい! 受け流してから切り返せるはず。

 ヒビが広がり割れていく。


 ついに刃先は折れ飛んでしまう!


 嘘でしょう!!


 敵の一撃が脳天に直撃。

 眼の前が暗くなる。


 そうだ、剣じゃない、刀、そう日本刀じゃないと!


ーーー


 俺は転生したらしい……


 そんな……まさか!


 居合の練習から、腹を突き刺してしまったんだ。

 たまにある失敗だ。

 死んだ話は始めてだ。それが自分なんて……笑えない!


「はははははは!」


 取り戻した記憶が笑いを誘う。

 バカみたいな終わりだったな。 

 転生ものの話ならここで話は始まる。

 けど、俺には前世の最大の悔いを思いだす!

 

「た、竜麿……竜麿ーー!!!」


 脇差し、大丈夫か!

 ぬいて袴で血をぬぐっただけだ。

 そう、油をさしていない。

 血で錆びてないか!! 

 傷んでないか、せっかくの大業物。

 

 ふつうに居合で使うものじゃない、名刀を痛める事はしてはいけない。

 あの素晴らしい刀で試したくなり、やってしまいました。テヘ……


 テヘで人間の命が失われた。

 先生にも悪いことしたな。


 しかし、そんな俺の命とひきかえに残っていてくれ、師匠、俺の墓よりもか、刀の手入れを、警察に渡す前に手入れを……証拠なんて、どうでもいいから。


 竜麿に悪いことしてしまった……


 ふと、友人があたふたと汗を俺の顔色をうかがっている。


 それは心配にもなる。

 頭に剣が振り抜かれていたのだから、しょうがないよな。

 しかも、理由のわからない刀の名前を口にしたらいけないよな……


「お、おい、大丈夫か……ユリィー?」


 あぁ、もう現世の名前とは違うんだ。

 俺の今の名前はユーリィ・イワノビッチ・ヤマトノフだ。

 辺境伯の一人息子だ。

 

 地方を守る辺境伯は王国の要だ。そんな国を守る家に生まれたのに剣の才能はない。

 

 それでバカにされ続けた成績が悪い俺を助けるために、稽古をつけてくれているのは友人のアレクセイ、とても頼りなるやつだ。

 背の高いイケメン。

 だから、俺をほっとけないのだろう。


 俺の才能がない理由がよくわかった、

 剣は両刃の片手剣、日本刀とは違う。

 しかし、才能がないわけだ、前世はこれでもかと竹刀、木刀や真剣を振り回していたのだから。

 

「いや〜なんでもないよ。はははは」 

 

 怪訝な顔で友人は俺を見ている。


 そうだ、刀がないとダメだ〜


 一ついえるのが、刀をよこせ!

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