第十一話 転換点〜新たなる旅路〜
「何を言ってるかわからんが、いいだろう!お前の召喚獣、見せてみろ!」
こんなそれっぽい戦いをするのもこいつらが来てから初めてだな。
俺はラルスから貰った魔力水をゴクゴク飲む。
瓶の中の魔力水が無くなったところぐらいで、ラルスが言ってくる。
「お前が召喚した召喚獣はこれからも仲良くしていく相手になる可能性がある。しっかりと強いものを作れよ。まぁここでお前は死ぬから意味ないけどな。」
じゃあ言ってくんな。
そんなことも思いつつ、俺は三人の方を向いて言った。
「大丈夫だ、お前らは安心してみてろ」
そう言ってラルスの方を見て、大声で言った。
「ラルス!ここで俺と出会ったのが運の尽きだ!ここで死ぬわけにはいかないしな!」
そして俺は手の先に魔力を集中させた。初めて魔法を撃った時とは段違いに魔力が手に集まっているのがわかる。何が出てくるかはその人がそのとき思っていたものと言っていたが、特に出したいものもないので、何も考えずに、ランダムで出るようにしよう。
俺は手を上にかざして言った。
「出よ、俺の召喚獣!」
そう言うと、周りがピカッとひかり、俺は腕で目を覆い、自分の目がム◯カみたいにならないように、必死になって光を遮った。
そして光が消え、光が出た真ん中の方を見ると、そこには人間っぽい男性が立っていた。
その男は帽子を被り、そこかしこに存在している普通の人間のような容姿をしていながら、どことなく強大なオーラが感じられ、それでいて某動画投稿サイトの短い動画で何度も見た男そのものだった。
その男はそこら辺の石を拾い上げ、こっちに向かってこう言った。
「これはジオードだよ」
そこに立っていたのは最強の石壊し職人、ジオー◯ニキだった。
米村でん◯ろうにも並ぶほどの最強の科学者で、それでいて最強の力を持っており、世界のジオードを見つけては真っ二つに割って、また割ってを繰り返しているなんとも強靭な男だ。
そんな男をラルスは睨め付け、指をさして言う。
「さぁかかってこい。お前の相手は私だ」
正直言ってどのぐらいジオー◯ニキの力があるのかはわからないが、恐らくこの勝負の勝ち目はもうついているだろう。
俺はばあちゃんに「今までありがとう」とスマホでメッセージを送る。
そんなことは知らず、ジオー◯ニキはそこら辺の石を拾っては「これはジオードだよ」と言いながら、フェミエルやリエル、ランパードに見せつけ、ポッケットに入れる行動を繰り返している。なんで俺の家の周りにはこんなにもジオードがあるのだろうか?もしかしたらただ「ジオードだよ」って言いたいだけなのだろうか?
そんな全く攻撃を仕掛けてこないジオー◯ニキに若干キレ気味のラルスが、イライラした声で言う。
「おいそこの召喚獣。お前の相手はそこら辺に転がっている石ではなく、この私だ」
それを言われてもジオー◯ニキは石を集め続けている。
そんなジオー◯ニキに痺れを切らしたラルスがジオー◯ニキの肩を押しつぶす勢いで掴む。
「何度もいっているだろう。お前の相手は私だ。何回も言わせるな」
そんな言葉を聞き、ジオー◯ニキは石を集める手を止めた。
そして彼は手に持っている石を全て地面に落とし、ラルスの方に手を伸ばした。
頼むからいらないことはしないでくれと俺たち四人は心の底から願う。
そんなことを思っている中、ジオー◯ニキはあるところ手で掴んでいた。
それは、
ラルスの左玉袋である。
((((やりやがった…))))
なぜこう、自分が怒って欲しくないことが毎回起ってしまうのかが理解できない。
ジオー◯ニキは左玉袋を掴んで、手を回しながら左玉袋全体を触っている。
もうそろブチギレしそうなラルスが手の力を強めて言う。
「その手を離せ、私はお前を殺すことも…」
そう言いかけたそのとき、ジオー◯ニキは左玉袋から手を離し、ラルスの言葉を遮るように大声で言った。
「これはジオードじゃないね!」
そういうとジオー◯ニキは手で拳を作り、その拳を下に下ろして、
バゴォーーーーーーーーーーンッ!
振り下ろした拳をラルスの左玉袋に向かって思いっきり振りげ、アッパーを繰り出した。
「痛ったッッッ!!!ちょっと待て本当に痛い!」
ラルスは地面に倒れ込んだ。ラルスの左玉袋は見事に粉砕され、スプラッシャー映画を見れない人は絶対に目を瞑ってしまいそうになるほどの痛々しい状態になっていた。
あまりの痛々しさに、なんか自分の左玉袋もヒリヒリしてきた。
あんな偉そうにしていたラルスも、顔が真っ青になり、必死になって自分の左玉袋に回復魔法をかける。
俺は申し訳ないと思い、できるだけ優しい声で言った。
「悪かった大丈夫か?でももう無理そうだし、帰ったほうがいいんじゃないかな?」
ラルスはやっと落ち着いたのか、ゆっくりと左玉袋から手を離して立ち上がった。
ジオー◯ニキはまた俺の庭に落ちている石を集めている。
「はぁ…はぁ…そうだな…私の負けだ…帰るとしよう…」
「わかった。すまん左玉袋粉砕しちゃって」
俺はなんとも物騒な言葉を口にする。
「心配しなくても…大丈夫だ…お前、結構やるんだな…」
「いや俺じゃなくてジオー◯ニキがね。あのお方は敵にしてはいけないな」
ずっと隠れていたリエル、フェミエル、ランパードが走ってこっちに向かってくる。
「勝ったんだなはやと!やっぱお前はやればできるな!」
「やるじゃん祖チン。見直したよ」
「本当にやるわねはやと!あなた、こんな最強の魔法使いを倒せるなんてすごいわ!」
ジオー◯ニキが全てやったのに、なぜか俺の手柄になっているが、まぁいい。
リエルがラルスを手でシッシッと追い払うようにしながらラルスに言う。
「はい、これでわかったでしょ?あんたらごときじゃあのクリスタルの場所もわからないだろうし、わかったとしても私たちに勝つことはできないのよ!」
いやだいたいクリスタルの位置が特定できたからここにきたんだろ?クリスタルの場所わかってないわけないだろバカか。
俺はなぜか一番偉そうにしているリエルをスルーして、ラルスに言った。
「まぁ、これでわかっただろ?もう来ないでくれ」
「ああ、そうする」
ラルスはそういうと、テレポートの詠唱を唱え始めた。
さすが世界を跨ぐ魔法だ、周りに風が吹き出し、周りにある木は台風が来た時のように風に押されており、上の空には渦を巻くように雲がラルスの真上に集まり、雷がゴロゴロと鳴り出した。
ラルスが詠唱を終えると、ポータルのようなものが開いた。
ポータルの中には宇宙のようなものが広がっており、異世界のような光景は確認できなかった。
フェミエルが言う。
「ポータル?私たちのテレポートの時はこんなの使わなかったのに…それに、ポータルは架空上の魔法のはず…」
「これか?これは独自開発した魔法だからな。本とかでは結構出てくるけど、実現するのは難しいって言われてたしな。だが私が2年ぐらいかけて発明したんだ。私たちの国の幹部以外にはこの情報は漏らさないようにと言われていたからな」
「そうなの?すごいわね!」
リエルもフェミエルとラルスの会話に乗っかって言った。
もうラルスが仲間みたいになってしまっている。まぁ、強いやつは敵にしたくないしな…
俺はポータルに入ろうとするラルスに向かって少しばかり笑いながら言った。
「ま、迷惑かけないならたまには遊びに来てもいいぞ?」
ラルスは苦笑して言った。
「私の玉袋を潰したやつがいる家には行きたくないな」
「確かにな」
そう言って別れを告げて俺は三人に言う。
「よし、今日は疲れたからいっぱい飲むぞ!」
「「「賛成!」」」
そう言いながら家に向かった。
その時だった。
「……ストップ」
「なんだ⁉︎体が動かない」
「なによ…この魔法…フェミエル!魔法解除をしてみて!」
「わかった!アンチマジック!…アンチマジック!…効かない」
「おいはやと、これどうすんだ?俺剣使えないから本当に役に立たなくなったぞ!」
急な出来事に混乱している俺たちにラルスが話しかけてくる。
「おいお前達、私からしてもお前らからしても俺たちは敵国だ。お前らをそう簡単に逃すわけないだろ。もちろんお前らからクリスタルも奪うつもりだ」
俺はラルスに向かって叫んだ。
「ふざけるな!お前負けたんだから帰れ!またジオー◯ニキに玉袋粉砕させるぞ!…やったるからな!行くぞ!おーい!ジオー◯ニ…」
そう言って最後にジオー◯ニキがいた場所を見てもそこにはその姿はなかった。
ラルスが苦笑しながら言ってくる。
「ジオー◯ニキとやらなら、動画撮影とか言って帰って行った。だからここには私の敵はいない。お前らは終わりなんだよ!」
ランパードがラルスに怒鳴りつける。
「おい!約束と違うだろこのクソ野郎!俺たちをどうすんだ!」
ラルスは落ち着いた様子で言う。
「まぁまぁ落ち着け、お前達はここのポータルの先にある過酷な場所に行ってもらう。そこでゆっくりと苦しみを味わうがいい」
「ふざけるな!はやと!何か手はないのか⁉︎」
「ねぇよそんなもん!俺は魔法もロクに使えねぇんだぞ!」
俺とランパードが言い争っている中、ラルスが落ち着いた声で言う。
「まぁ、これからみんなで仲良く死んでいくわけだから、争いはやめておけよ。さぁ!もうちょっとでポータルが開くよお前たち!」
リエルがラルスを睨みながら言う。
「あなた、覚えておきなさい。必ずしやいつか、あなたを見つけて…」
それを遮るようにラルスが言った。
「お前らの幸運を祈ってるよ!オープンザポータル!」
そういうとポータルが最初とは比べ物にならないぐらいに大きくなり、俺たちを吸い込んでくる。
「やめろ!まだは俺ここの世界で連絡したい人がいっぱ…」
「ではお前ら!楽しんでこいよ!」
ラルスが楽しそうに言った次の瞬間
うッ__!
ポータルに吸い込まれて周りが明るくなった。
我慢できずに目を瞑る。
どこだ?どこなんだここは?
そう思いながら目を開けると、そこには緑の大地が広がっていた。
俺は目を開けたら横に居たリエルに尋ねた。
「なぁリエル、ここってどこなんだ?」
リエルがびっくりした表情を浮かべる。
他二人も起きた後、ただただ呆然としていた。
俺はもう一度リエルに聞く。
「なぁ!結局ここってどこなんだ?」
リエルは恐る恐る言った。
「ここはサングレッド州北部ナランキラ平野。あなたのいう”異世界”ってやつよ」
俺はその瞬間、何かよくわからない感情が込み上がってきた。
そして俺は目を擦って夢ではないことを確かめる。
どうやら、本当に夢ではないらしい。
俺は言った。
「異世界…だってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
俺は今、ここに宣言しよう。
俺の新たな冒険が、今始まる!
空からはヒロインは現れない〜異世界でチート無双したい俺と天才王女の新たなる旅路〜 新有機 @soutoyo0930
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