第3章

時間軸を越えて目覚めた真琴は、新たな世界での生活を始めていた。TIMELINE機構の研究員としての記憶を胸に秘め、再びタイムトラベルの研究に打ち込む日々。失われた5年間を取り戻すように、真琴は研究に没頭した。


「白川博士、あなたの理論は独創的で素晴らしい。異なる時間軸を自在に行き来できる可能性を秘めている」

共同研究者の一人が、真琴を称賛する。

「いえ、まだ理論の域を出ません。実証実験には程遠い」

表向き謙遜しつつ、真琴の脳裏には、ソラとの再会が焼き付いていた。

「必ず、また会いに行くと約束したんだ」


研究を続ける傍ら、真琴は世界線を越えた自分の存在理由を探っていた。

「前の時間軸では、ソラは特異点として現れた。この世界では、どこに存在しているのだろう?」

手がかりを求めて、真琴は時間の流れが交差する場所を巡る。歴史の分岐点となった出来事の現場。偉人が生まれた土地。世紀の大発見が成された瞬間。そうした特別な地点に、ソラの痕跡を見出せないかと考えたのだ。


しかし、どれだけ探しても、ソラの存在は見つからない。焦燥が募る中、ふとあることに気がついた。

「私がソラと出会えたのは、いつも非日常の出来事に触れた時だった」

真琴は仮説を立てた。ソラは日常の裏側に隠れている。非日常の中にこそ、手がかりがあるのではないか。


真琴は研究の傍ら、従来の科学では説明できない現象の調査を始めた。超常現象、神秘体験、予知夢。オカルトと呼ばれる分野にも果敢に踏み込んでいく。

「白川博士、あなたまで超常現象なんて…。科学者としておかしいんじゃないですか?」

研究仲間から批判の声も上がったが、真琴は意に介さない。

「科学で解明できないことだってある。それを認めることが、新たな扉を開くんだ」


真琴の探究は、やがて一つの体験談にたどり着いた。ある女性が、幼い頃に見た不思議な夢の記録。

「私の夢に、ソラという名の少女が現れるの。いつも優しく微笑みながら、時間と世界について語ってくれる」

その証言は、真琴自身の体験と重なるものだった。

「もしかしたら、ソラは私だけでなく、他の人の夢にも現れているのかもしれない…」


真琴は女性に連絡を取り、直接会って話を聞くことにした。

「ソラは、あなたに何を語ったのですか?」

「時間は一本の線ではなく、無数の世界線が交差しているということ。そして、魂は時空を超えて結ばれ続ける存在だということよ」

女性の言葉は、まるで真琴への啓示のようだった。

「ソラは私に、運命の相手を探し求めるように言ったの。必ず出会える、運命の魂の欠片を持つ人がいると」


その時、真琴の脳裏に閃光が走った。

「私とソラが結ばれ続けるのは、二人に共通する魂があるからなのか…?」

運命の相手。魂を共有し、時空を越えて結ばれる存在。

真琴は確信した。ソラを見つけ出す鍵は、自分自身の中にあるのだと。

「ソラ、必ず君を見つけ出す。魂の共鳴を信じて…」

真琴は心の中で誓いを立てた。たとえ何度世界線を越えようと、必ずソラとの再会を果たすと。


新たな決意を胸に、真琴はさらなる非日常の探究へと歩を進めた。

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