第11話 はくちょう座の攻防②五人組作成ゲームの検討
ベタAB海峡を塞ぐ要塞砦排除のシミュレーション。高校生五人組作成ゲームが大きなヒントを与えてくれるとの確信を持つボンドは、ペック提督とハリス副提督にその内容を披露する。まずは論より証拠。二人をコックピット隣室の戦略小ブース、ビデオルームへ案内するとデッキにゲームソフトをセットして、ボンドはリモコンのプレイボタンを押した。
♪1 ファイティングゲーム アップロード 不気味に迫る敵空母 支配の権化デスアーム キラーロボットを従えて フェニアンの空に現れる 自由の戦士大ピンチ あー立ち上がれ テラスと共に 王家のソード 勝利を掴む ♪
力強く軽快なリズムと共に、いきなり目の前の60インチ画面に独裁軍の旗艦空母デスアームが登場したではないか。いつ見ても不気味で、まるで悪魔の化身のような死の墓場をイメージさせる黒々とした船体だった。
♪3 通せんぼ アマテラス 天の岩戸で道塞ぐ さすが強敵どう料理 セクシーお色気作戦だ ブルルン踊りでおびき出し バッタバッタとなぎ倒す あーわが道を塞ぐヤカラは 一つにまとめ 宇宙の彼方 ♪
最後の3番の歌詞を歌う四人の合唱と共に、司令官千加子が恐らく勝負服だろう、そのピシリと決まったピンクのタイガーマスク・パジャマをあっという間に脱ぎ捨て、ボリューム満点セクシーボディーを岩戸に曝して踊り出したではないか。モダンジャズダンスのようにリズミカルに地を踏み、ロケット爆乳が激しく揺れると、残り四人のメンバーが陣取った岩戸上から、
「♪ 出よっ出よー ♪ 岩 ♪ 穴ー ♪」
岩戸に向かっての四人の合唱が響き渡り、千加子のブルルン踊りと共に歌で岩穴からの敵の出場を促す。
「な、何だ! このセクシー過ぎるシチュエイションは!」
ペック提督が、司令官千加子の余りのセクシーダイナマイトボディーに、目が飛び出さんばかりに画面に吸い込まれる。
やはり刺激が強すぎたようだが、五人の実力を判断するには彼ら作成ゲームが一番の材料である。
! ブルルンルーン ! ブルン ! ブルン !
地を踏む足が勢いを増し、形の良いたわやかな巨乳が激しく揺れて、大音響が湧き上がる。
♪ 出よっ出よー ♪ 岩 ♪ 穴ー ♪
四人も体をゆすり声を張り上げ、岩戸に向かい開門を促す。
「オオオー! オオ! オオー!」
合唱が効いたのか、それとも千加子のブルルン踊りの効果なのか。出るわ、出るわ。兵士どもが岩戸を開け、踊りながら出てくるが、頭上に陣取るのぞみのダーツ矢の餌食であった。
「矢は、イヤッ! イヤイヤ!」
矢を潜り抜けた兵士には、クルルンルーン! と、のり子の布団バサミブーメランが襲う。
「ブーメもイヤーン。イヤッ! イヤイヤ!」
セクシーに体をくねらせ、必殺ブーメをかろうじて逃れた精鋭トランスゼンダー兵たちには、バッコーン! と、優一のサッカーボール弾が顔面にめり込む。
「フフ。顔が弱点なのじゃ」
不敵に、ではなく、頬を引きつらせビビリ笑いする優一の前に、グワーオー! とキングコングも真っ青の、アマテラス族の女王アンマーテルの夫・ゴリ万将軍登場。
「ひぇー! 竜児、タッチ、タッチ。タッチ・交代」
ゴリラ勇者には、まっきら金げの赤鬼隊長・竜児の登場なのだ。
「おのれ。よくもよくも、可愛い部下たちを! グァオー! これでも食らエー!」
ゴリちゃんは大木顔負けの豪腕を竜児の頭上に振り下ろすが、赤鬼隊長はヒラリ・ヒラリーからトランプ魔法のクルクルかく乱。そしてバイバイ・バイデーンと、牛若丸のお株を奪う体さばきでハンマーパンチをかわすと、
「トリャー!」
〈必殺! ミサイル飛び後ろかかと蹴り〉を顔面にブチ込んだのだ。
「ぎゃいーん!」
ここにゴリ万将軍は、部下たち同様あえない最期を遂げたのであった。
「ラストは私に任せて!」
タイガーマスク・パジャマを素早く着込んだ千加子が、両手に二個のウロトラ剛繊維織り・弾丸バレーボールを抱いて、岩戸をくぐり要塞砦へ入る。
「アマテラス族当主・アンマーテル! 天誅じゃ、お覚悟!」
りんとしたトドメ声と、必殺スパイクが右手から放たれるのが同時であった。が、
「キェー!!」
然るに敵もさりながらの者であったのだ。ネグリジェでデカパイを隠し、もみほぐしエキスパートというか―――按摩師・座頭六の背後に回りながら、牙もあらわに物みな凍る必殺技・絶対温度呪詛を放ったのだ。
〈バキッ! キューン、ペキペキ〉
絶対温度呪詛に阻まれてしまい、天誅ボールは瞬時に凍ってパラパラと砂のように岩床に舞い落ちてしまう。が、想定内。そう、千加子の想定内であった。
「先刻承知じゃ!」
二の矢の早いこと早いこと。セカンド必殺・天誅ボールは既に左手を離れていて、〈ダー! シュルルルーン!〉と岩床すれすれに砂塵を巻き上げ、ターゲットにカチッとロック・オンなのだ。
そう。そうなのです。千加子の常套句を拝借しますれば、サヨウでアリンス。〈バッシーン!〉と、轟音をとどろかせ、アンマーテルは座頭六の坊主頭もろとも、背後のギロチン岩に激突してしまったのであります。
「ウーン!」
夫同様、ここにアンマーテルも敢えない最期を遂げたのであった。
♪3 通せんぼ アマテラス 天の岩戸で道塞ぐ さすが強敵どう料理 セクシーお色気作戦だ ブルルン踊りでおびき出し バッタバッタとなぎ倒す あーわが道を塞ぐヤカラは 一つにまとめ 宇宙の彼方 ♪
戦闘場面をなぞるように、最初に流れたテーマ曲の三番が、再度軽快なメロデイーと共に8トラックスピーカーから流れ出て、とどめのダメを押す。
「はーい! 岩戸攻りゃーく! ゲームオーバーでーす! 攻略法は、ブルルン踊りー! ヒントは、分かりますよねー。開けさせて入るー! でした」
ゲーム終了の表示と共に、☠️💀☠️💀と💆💆💆💆、それに🎎🎎マーク一杯のワン切り替え画面を置いて、五人組がにこやかに視聴者に手を振って最後のあいさつ。
「いかがでしたでしょうか」
ボンドがデッキからソフトを取り出し、二人の反応を窺う。
「ちょっと、私たちの世代には刺激が強すぎるわね。ボンド中佐の意図は察することはできたと思うけど」
ハリス副提督が頬を染め、ため息混じりに肩をすぼめたが、中々どうして。まだまだ若い者には負けない、チャーミングで可憐な色香が匂い立った。
「邪馬台国論争を題材にしたゲームで、五人組はどうやら邪馬台国畿内大和説に立っているようだね。つまり邪馬台国の女王・卑弥呼は奈良県桜井市の箸墓古墳に眠っている、との立場で、反対派である九州説論者がアマテラス族ということだね。そして天照大神(あまてらすおおみかみ)になぞってアンマーテルを登場させ、天の岩戸を築いた彼女を岩戸からおびき出すための作戦ゲームが、君の手元のソフトだということだね」
ヤーポンのトウキョウ支局勤務時代に歴史書を読み漁っただけあり、提督はヤーポンの歴史に通暁していて、ハリス副提督とは別の意味でボンドの意図を察したようである。
「面白いかもしれんね。入試イジクリ東大族との代理バトルでも、奇抜な発想で勝利を収めてくれたから、今回も彼らに任せるとアマテラス族を名乗る海賊一味を撃退してくれるかも知れないな。テラス姫も捨て難い魅力の持ち主だが、千加子司令官のセクシーダイナマイトボディーは何とも迫力満点だったな」
提督は岩戸前のブルルン踊りを思い浮かべ、ニンマリと鼻の下を伸ばしたが、ハリス副提督と視線が合うと慌てて真顔に戻って続けた。
「そうだな、気品のある大人好みの―――ギリシャニンフに導かれた静の闘い。対するに、セクシーダイナマイトボディーを武器に敵をしびれさせる、正に迫力満点ドラマチック動のバトル。そうだな、今回は若者になった気分で、ドラスティック決着を期待して、動のバトルに一票を入れようか。よし! 私は君の案に賛成」
これで副提督の反対があっても二対一で可決だが、
「私も異論はありません」
ハリス副提督も賛成に回ったので、ボンドの意図通り、五人組へのミッション依頼案が成立したのであった。
「それでは早速、レジスタンスのヤーポン極東支部長・奥村バアバが住む、城崎温泉桃島池基地に依頼レターを電子文書で送ります」
善は急げというか、提督がまたぞろテラスへのミッション依頼を口にする前に、ボンドはペックに提督決済書に署名させると、即座に緊急電文レターを五人組にも発信したのだった。
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