第2話 決意②


 おばさんの名前は高山美智子。

 どうやら20年以上、この土乃浦周辺の物件を紹介してきたらしい。

 近くに大型ショッピングモールが数年前にできた影響で、駅周辺のお店はシャッター通りと化したとか、毎年、住む人が減って寂しい等と俺に土乃浦の事情を色々と教えてくれた。


「どうしてこのあたりに引っ越そうと?」


 高山が俺に質問してきた。

 俺は仕事の都合や釣りが講じて引っ越しを決意した等、事のあらましを全て話した。

 少し熱がこもっていたかもしれないが、その方が相手も本気になって探してくれるのではないかと内心期待していた。


 彼女はそんな俺の話を曇った表情で聞いている様に見えた。

 少しウザがられたかと俺は思ったが、彼女はすぐに先ほどの笑顔をみせた。

 それから“土乃浦港”から近い物件を何件か紹介してもらった。丁度、引越しシーズンの4月に来てしまったせいで紹介できる物件が限られていた。


「迷いに迷った挙句、入居を後から決めても既に他の人で契約済みなんてことはザラにあるのよ。だから、良いと思ったらすぐに決めた方が今の時期は良いわ」


 俺は彼女の親身な話を聞き入れ、すぐに提案していただいた物件の内見を依頼した。

 幸いにも今日のお店の予約は俺以外に居ないらしく、すぐに案内できるよう少し時間が欲しいと言われ、俺はそれを快諾した。

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