第29話 学校一の美人な先輩が、俺にだけ水着姿を見せてくれる

「ねえ、今からいいモノを見せてあげる♡」


 朝の時間帯。春風良樹はるかぜ/よしきは今、先輩と二人っきりで女子水泳部の更衣室にいる。


 椅子に座っている良樹の丁度目先には、先輩の胸元が見えるのだ。

 しかも、先輩は学校指定の水着ではなく、市販で売られているようなビキニ系の水着を着用していた。


 元から好きだった東雲雫しののめ/しずく先輩と一緒にいられるだけでも幸せだったが、内心、その興奮が収まることはなく、危うく感情が表に出そうになっていた。


 なぜ、このような事態になったのか、それには理由がある。

 それは数分前に遡るのだが――




 ある日の平日の朝。

 二学年の良樹が自身の席に座っていると、教室の入り口付近から顔を出した、一つ上の先輩から呼び出された。


 先輩というのは、学校内でもかなりの美人な方であり、教室にいる他の人らも、その先輩の姿をまじまじと見入っていたのだ。

 しかも、水泳部という事も相まって注目の的になっていた。




 そして現在、良樹は雫先輩と共に女子更衣室内にいる。


「ねえ、どうかな? 私の水着姿♡」


 美人な先輩が、良樹の為だけに優しい口調でかつ、魅惑的な表情を見せながら誘惑してくるのだ。


「これね、昨日買ったばかりで、早く良樹に見せたかったの」


 先輩は良樹の目の前で、谷間が見えるように前かがみになっている。


「……露出狂的な?」

「そんなわけないわ。私は、良樹だけの露出狂なんだから!」


 雫先輩は不思議と、良樹にだけ懐いているらしい。

 先輩から、如何わしい誘いを受けたとしても嫌な気分にはならなかった。


 本音で言うと、雫先輩の水着姿を元から見たかった。

 心の中ではニヤニヤが止まらなかったが、そんな感情を表に出さないように、必死で真面目な顔を浮かべ続けるのだった。

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