第27話 俺のアパートには、アレがいる⁉

 このアパートには以前から違和感があった。

 誰かに見られているような視線を感じることが度々ある。


 まさか、誰かいるとか?

 そ、そんな事はないよな。


 考えすぎかもしれないと旭拓真あさひ/たくまは思い、瞼を閉じて深く考える事をやめ、アパートの床で仰向けになる。

 が、その視線が収まる事はなく、拓真は瞼を開けた。


「⁉」

「どうしましたか?」


 その時、仰向けになっていた拓真の視線の先には美少女の顔があった。

 彼女は拓真の顔を覗き込んでいる。


 すぐさま上体を起こしたが、なぜか、その子とぶつかる事はなかった。


「本当に、何かいた⁉」


 拓真は変な緊張感に襲われながら辺りを見渡すが、誰の姿も、そこにはなかった。


「はい、いますよ!」


 拓真は声がする方へ視線を向かわせた。

 そこにはちゃんと一人の女の子が佇んでいたのだ。

 しかも、制服を着こなしている。

 一見、普通そうに見えるが、体が少しだけ透けて見えていた。


「というか、いつからここにいたんだ?」

「私、最初っからいましたよ」

「最初から⁉」

「はい。それと一つ、お願いがありまして」

「な、なに?」

「私がここにいても、気にせずに生活してくれませんか?」

「いや、それは無理かも……」

「私、何もしませんから。お願いします。また、誰かに出て行かれたら除霊されるかもしれないんです!」

「その方がいいと思うけど?」

「それは嫌なんです。だから、本当にお願いします!」


 彼女は拓真の目の前で土下座をしていた。

 そんな対応の仕方に悩み込んでしまう。


 考えてみれば、入居時に契約した時のアパート代が非常に安かった。

 節約した生活が出来るなら、それもありかもしれないと思いながら、拓真は仕方なく幽霊少女の静音しずねと暮らす決意を決めたのだ。

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