第19話 俺の事を嫌っている、強気な美少女の様子が⁉

「というか、あんたってさ! なんで、いつもそうなの?」

「な、何が?」


 夕暮れ時の放課後の時間帯。

 近くにいるクラスメイトの時雨梓しぐれ/あずさから強気な口調で言われ、雑巾を手にしている高野海大たかの/あまたは体をビクつかせた。


「何がって。気づいてないわけ? 私からいつも距離を取っているような気がするけど」

「そ、そんなわけないよ」


 海大は彼女に対し、誤解だからと返答した。


 海大と梓は今日の委員会活動を終え、二人っきりで教室の掃除をしていたのだ。


 ツインテールな髪型の梓は雑巾を持ちながら、目の前に佇む海大の事をジーッと見つめている。


 なんで今日に限って、こうなってしまうのかな……。


 あまり好きではない相手を怒らせてしまったらしい。


 というか、どこに怒られる要素が?

 ただ、掃除を手伝おうとした時に、たまたま手が当たってしまっただけなのだ。


 それがいけなかったのかもと思いながら、一人で悩み込んでいた。


「……私がさ、好意を持って話しかけている時には何もないのに。私が何もしてきてない時に限って、私を意識させる事をしてくるのよ!」

「え? 何が?」


 海大は首を傾げるだけになってしまった。


「私、あんたの事がす、す……」


 梓は顔を真っ赤にしながら、裏返った大声を出す。


「え?」

「だ、だから! すなの!!」

「は?」


 さらに意味不明な展開になった。


「えっと……すって? 料理で使う酢の事?」

「違う、バカ! そんなわけないじゃない!」


 梓はぶっきら棒な言い方になる。

 怒りっぽい顔を浮かべた後、フンと海大から顔を逸らす。


「で、でも……本当は嬉しかったんだからね……」


 再び掃除をし始めた直前、梓は小さく言葉を漏らしていたのだが、その言葉は海大の耳には届いていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る