第18話 いつも物静かな美少女が、俺にだけ心を開いたわけ

 高校一年生の小泉友也こいずみ/ともやには今、気になっている子がいる――




 友也は今、学校にいる。

 いつも通りに教室に入るのだ。


 教室は若干騒がしい。


 友也の席は、教室の窓寄り。

 正確には窓の席から数えて二番目で、前から数えると三番目の席。


 友也は通学用のリュックを机に置いた後、席に座る。


 隣には、いつも通りの美少女がいるのだ。


 彼女――鹿島仁美かしま/ひとみは普段から無口で、あまり他人と関わりを持たず、白色が似合いそうなタイプの子。

 普段から本を読んで過ごしている事の方が多く、黒髪のロングヘアを触りながら無言を貫き通している。

 そんな彼女に対し、友也は話しかけたい願望があった。


 以前、たまたま彼女が読んでいた本の中身が視界に入ったことがあった。

 その本は友也が好きなライトな本であり、同じ趣味である事が分かったからだ。


「お、おはよう」


 友也は席に座ったまま、小さく挨拶をする。


「……」


 全然返答がなかった。


「その本って、面白いよね」

「……? え?」


 仁美は本を読んでいた手を止め、ハッとした顔を浮かべ、友也の方を見つめてくる。


「……あなたも、これ好きなの?」

「まあね、普段から読んでいるし」

「そ、そうなんだ……」


 彼女と初めて会話する事ができた。


 もしかしたら、この学校に入学して、彼女がまともに会話したランキングの五位には入る勢いがありそうだった。


「この本、好きな人がいるんだね……じゃあ、あとで二人っきりの時に話さない?」


 ――と、彼女から落ち着き払った口調で誘いを受けたのである。

 そんな彼女の愛嬌ある表情にドキッとし、さらに彼女の事を意識し始めながらも承諾するように頷くのだった。

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