第15話 クラスメイトの美少女から、「誰が好きなの」って、言われた日――

「伊吹君って、好きな人いるの?」


 昼休み。屋上で弁当を手に、箸を使い食べていた周防伊吹すおう/いぶきの隣のベンチに、とある美少女がやってきて言った。


 今、伊吹は、そのクラスの子と屋上で二人っきり。

 しかも、伊吹が昔から好意を抱いていた相手なのだ。


 綾瀬雫あやせ/しずくは、クラスの中だけじゃなく、学校内でも注目されている子であり、黒髪のショートヘアが良く似合う美少女。

 普段から告白されたり、友人関係も広いために、人と関わる事に抵抗がないらしい。

 そのためも相まって、彼女は自然体で話しかけてくる。


 伊吹は、近くにいる彼女の存在に、さらに緊張感が増し、食事をしていた手を止めた。


 どういう顔を彼女に向ければいいのだろうか。


 全然、右隣を見ることができず、少々俯きがちに心臓を震わせていたのだ。


「私、知ってるんだよねー」

「な、なにを?」


 ドキッとし、それから伊吹は彼女の方をゆっくりと見やる。


「私ね、伊吹君の事が好きな人、知ってるんだけど」

「え、俺の事が……好きな人……?」


 一体、誰なんだ?

 でも、こんなにパッとしない相手に好意を抱くなんて変わっていると、自身の心で悲観的に考えてしまう。


「知りたくない? 知りたかったら、君の好きな人を教えてくれないかな? ね?」


 隣にいる雫から顔を覗き込まれるように問いかけられ、伊吹は手を震わせる。


 ここで言わなきゃいけない。


 雫の事は昔から好きだった。

 同じ小学校、中学校を経て、高校まで同じ。

 何度も伝えられるチャンスがあったけど、何度も彼女に言えず、今までの日々を過ごしてきたのだ。


 ここで断ち切らなければいけない。だから、伊吹は彼女の瞳を見、勇気を振り絞って口を開く――


「き、君の事が……好き――」

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