第13話 好きではない女の子と、体育館倉庫で二人っきりになった話

「私、本当は――」


 体育の授業終わりの体育館倉庫。

 その時、彼女が本気の感情を、佐々木駿河ささき/するがにぶつけてきたのである。


 そんな瞬間を目撃した駿河の心は震え、後ずさる。


 好きではなかった相手から好意を抱かれていた事を知り、目を点にしていたのだ。


「え……そうだったの?」


 正面にいる彼女――横山飛鳥よこやま/あすかは恥ずかしそうに頬を紅潮させている。

 彼女は言い出してしまった事に羞恥心を抱き始めており、駿河の問いかけに、ただ頷くだけだった。


「で、でも、どうして、そんな事を?」

「だって……私がこんな発言をしたら周りから変に思われるでしょ……あんたって陰キャでパッとしないし、クラスからも浮いてるから。そういう事を人前で言えないし」

「そ、その言葉さ、結構心に来るんだけど……」


 飛鳥から好かれているのか、貶されているのか。よくわからず、駿河は混乱してしまう。


「でも、私……今まで周りの目線を気にして言えなかった事だったから。今しか言えないと思ったの」


 飛鳥は少し俯きがちになりながらも、か弱い声で言う。


 普段はクラスの中でも陽キャ寄りの女の子。

 金髪のショートヘアスタイルで、いつもはクラスの中心人物らとつるんでいることが多い。

 そんな彼女が、思い切って想いを伝えてきているのだ。


 何かしらの罰ゲームかと一瞬脳裏をよぎったのだが、そういう感じではなさそうだと、彼女の表情を見て、そう思った。


「駿河が良ければなんだけど……どうかな?」


 飛鳥は上目遣いで問いかけてくる。

 そして、手を差し伸べてきた。


 駿河は一応、不安な感情を抱きながらも、彼女を受け入れるかのように、手を差し伸べたのだった。

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