第11話 隣に住んでいるお姉さんが、両親がいない日に俺の家で料理をしてくれる

 お姉さんは去年から社会人であり、高校生の福山実ふくやま/みのるより三歳ほど上である。

 すでに結婚を前提に付き合っている人がいてもおかしくはない。

 けれど、実はその事を聞ける勇気があるわけでもなく、普段からモヤモヤした気持ちのまま過ごしていた。


 今日は両親が不在で、代わりに実の家に、隣近所に昔から住んでいるお姉さんが来ているのだ。

 お姉さんは落ち着いた雰囲気があり、ポニーテイル風にシュシュで結んでいた。


「ね、味付けは、これくらいでいいかな?」

「え?」


 夕食作りのために、キッチン台前にいるお姉さんから問いかけられていた。


「ボーッとしてた感じ?」

「すいません」

「別にいいんだけど。疲れてる?」


 実はどぎまぎしながらも小さく頷く。

 隣にいる、お姉さんとの距離が近すぎて困惑しているのだ。


「お味噌汁の味を確認してくれない?」


 お姉さんから、小皿によそった味噌汁を渡された。


 実際に飲んでみると、美味しかったのだ。


 これくらい料理が出来るのなら、付き合っている人がいてもおかしくないと勝手に解釈してしまう。


「どうかしたの?」


 突然、顔を覗き込まれ、実は慌ててしまった。


「隠してることがあるなら、話してくれた方が私も助かるかな」


 お姉さんは優しく微笑み返してくれた。


「じゃあ、聞くけど……お姉さんは付き合ってる人はいるの?」


 実の言葉にきょとんとした顔を見せると、少し考え込んだ顔になり、どうかなぁとはぐらかしてくる。


「でも、もしかしたらね」


 ――と、お姉さんが続けて言ってきた。


「どういう意味ですか?」

「それは内緒で」


 お姉さんは少し頬を紅潮させたまま。

 そろそろ、夕食にするからねと言って、木製のお茶碗にお味噌汁を分けていたのだった。

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