第10話 陽キャ女子な彼女と、ぼっちな俺がファミレスで出会った時から――

 長瀬渉ながせ/わたるは平凡に過ごしたいと思っていた。

 だから、誰かに対して心を開く事はせず、基本ぼっちな日々を送っていたのだ。


 そんな渉には休日の過ごし方がある。

 それは、昼頃に自宅近くのファミレスに通う事だ。


 渉は注文を終えた時までは、いつも通りに過ごせると思っていた。

 がしかし、今日だけは違った。


 今日――出会ってしまったのだ。

 クラスメイトの陽キャ女子と――


「アレ? 君って、あの人だよね」


 渉は困惑していた。

 彼女の方は渉の名前を忘れているらしいが、ここで嘘をついても面倒だと思い、しぶしぶと頷く事にした。


 陽キャ女子の鈴村佳すずむら/けいは金髪のロングヘアスタイルで、派手なイメージが強い。その上、休日なのに、なぜか制服を着ている。

 渉でさえ、私服なのにだ。


「君ってさ。普段から、ここを利用してる感じ?」

「え、まあ、そうかな」


 渉は曖昧な感じに答えた。


「何かの縁だし。ここの席でもいい? あっちから水を取ってくんね」


 渉が返答する前に、彼女は立ち去って行った。

 それから一分後――


「ただいま、戻って来たよっと!」


 彼女は渉と向き合うように、ソファに座る。


「テーブルを変えた事は店員に言ってきたからさ、心配しないで。それで私さ。ここのファミレス好きなんだよねー、えっと、渉だっけ? 渉は何が好き? というか、注文し終わった?」


 佳はテーブルにメニュー表を広げ、渉の方をチラチラと見ながら質問攻めをしてくる。


「注文は、すでにしてるよ」

「じゃ、私一人分でいいってことね、了解!」


 彼女と自分は、全然住む世界が違うと思っていた。

 けれど、今の彼女は親しみやすく感じる。


 渉は彼女に対し、少しだけ心を開こうと思ったのだった。

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