第6話 料理が物凄く下手な幼馴染の料理を食べることになったんだが⁉

「これ、美味しいじゃん!」

「確かにな。君って料理上手なんだね」

「そんなことないよ。でも、昔より上手くなった感じかな?」


 家庭科の授業中。ピンク色のエプロンを着用している幼馴染は、同じグループの男女二人から好評されていた。

 だが、楠竹広くすのき/たけひろはまだ口にはしていなかった。


 竹広は知っているのだ。

 幼馴染が昔から料理が下手だという事を――


 幼馴染と同じグループである竹広の目の前には、紫色でゲテモノのような見た目をしているスープ系の料理がある。


 これは絶対、お世辞で褒めているに違いない。

 そうじゃないとおかしいと思う。


 竹広は右手に持っていた銀色のスプーンを机の上に置いた。


「どうしたの? 食べないの?」

「そうだよ、後は、楠だけだからな」

「竹広、食べてよー」


 同じテーブルを囲んでいる幼馴染を含めたグループの人らに言われる。


 本当に美味しいのか、これ?


 竹広は皆が見ている前で不安な気持ちを払拭できないまま、再びスプーンを握る。スプーンでスープを掬い、口元まで運ぶ。


 匂いそのものがきつい。

 でも、皆の視線を強く感じるのだ。


 竹広は決心を固め、それを口にする。


「……⁉ ……ん……?」


 竹広は無言になる。

 食べてみた結果として、まずいとは思わなかった。

 でも、本格的に美味しいというわけでもなく、目が点になっていたのだ。


「う、うん、いいと思うよ……」


 竹広はあたり障りのない率直な評価を口から零すのだった。

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