第5話 俺の好きな女子マネージャーが、俺にだけタオルを渡してくる。
しかし、その彼女は他の部活メンバーと仲が良いのだ。
別に嫉妬しているわけじゃない。
けれども、この頃、真面目に部活を頑張っているのだ。
少しは意識してほしいと思ってしまう。
一時間程度のテニスの朝練が終わると、翔はテニスコートのフェンスに背を向け、周りを見渡しながら、その場にしゃがみ込んだ。
翔は左腕で汗を拭った。
「ね、大丈夫?」
急に天使のような声が聞こえる。
疲れていた感情が薄れ、翔はパッと視線をそちらへと向かわせた。
「これ、使って」
好きな彼女――
夏海はテニス部のマネージャーなのである。
彼女は翔の隣のフェンスに背をつけ、話し始めたのだ。
「明日さ。土曜日の事なんだけど、時間ある?」
土曜日か……なんで聞いてきたんだろ。
でも、休日って事は……まさか?
「どうかな?」
彼女は翔と同じ頭の高さになるように、その場にしゃがんで顔を向けてきた。
夏海との距離が近く、変なテンションになる。
「い、いいよ……あ、空いてるから」
「じゃ、約束してもいい?」
「う、うん……」
翔は頷いた。
それから目を点にし、頬を真っ赤にしたままボーッとしてしまう。
「おい、さぼってる奴、朝のHRが始まるから早くしろよ!」
コーチが何度も大きな声で、翔を含めた部活メンバーらに指示を出している。
翔はコーチの怒号で意識を取り戻し、テニスコートの後片付けを急いで始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます