第31話 町にて

 魔女がウトウトと寝ていると、キューとちいが魔女の布団に現れた。

「うわ!びっくりした。そうか。ドルゾーのネックレスの近くに戻るんだったね」

「ごめんなさい。魔女さん」

「ただいま~」

「おお!キュー。人間になったね。良かった。魔法はリセットされたんだね」

ミンクーの世界はお昼だった。キューとちいは町に買い物に行った。

「コングもジルも驚いていたね。魔法が解けた僕を見て」

「わたしの世界の服がびっくりしたのよ。早くこの世界の服をそろえましょう」ちいが言った。

町の者はキューの服を白い目で見て、ヒソヒソと噂話うわさばなしをしていた。

「なんか嫌だな。この町の人」

「キューのふるさとでしょう?わすれたの?」

「だめだ。やっぱり記憶があまりない。記憶は戻らなかった」

「そう・・今に思い出すよ」

「そうだといいけど」

 二人は服屋に着いた。いろいろな服が飾ってある。

「お客さん、まだ子供だね。お金持っとるのかね?」店主が言った。

「あります。大丈夫です」キューが言った。

「それならいいが」

「ちい、この服にする。どうかな?」

「いいね。身軽そうね」

「この服、下さい」キューがお金を出した。

「あいよ」店主はぶっきらぼうに金を受け取った。


 キューは服を着替え、ちいと町をぶらぶらしていた。コングに出会った。

「おお。服、買ったのか?」

「うん。コングはどこに行くの?」

「minku coffeeに行くところだ。一緒に行くか?」

「行く。行く」

 三人はminku coffee店へ向かった。

「本当は酒が飲みたいけどな」コングが豪快に笑った。

コングが笑うと、町の人はとてもびっくりして見ていた。

「なんか、元気がない町だな。ピエール王国という所は」

「うん・・みんな暗い顔で不機嫌だね」キューが言った。

「おっとそうだ。珈琲屋に行くなら、帽子をかぶらなきゃ。僕が王子と分かる人もいるだろうから」キューはさっきの店で買った、帽子を深くかぶった。

「minku coffeeってチェーン店なの?ペトンの町にもあったけど」

「そうだ。チェーン展開している」コングが言った。

「スタパみたいね」

「スタパ?なにそれ?」キューが不思議そうにした。

(パパもどこかの店で働いていたんだ)

「どうも広くて分からんな。人に聞くか」

 コングはあたりにいた中年の男にminku coffee店への道を聞いた。

「すまんが、分かるかい?」

「ああ、あんたらよそ者か。この先を曲がるとあるよ」

「ありがとう」コングは礼を言った。

「外の世界は・・この町の外は黒い国がやっぱりはびこっているのかな・・」男が暗い顔で言った。

「どこもかしこも魔物でいっぱいだった」

「そうだよね・・この町を出たいのだが・・」男はか細く言うと、去っていった。

三人はminku coffeeに着いた。


 扉を開けると、もくもくと煙草たばこの煙が充満していた。

先にいた客は3人を見ようともしない。煙草を死んだような目で吸って、コーヒーをすすっていた。3人は席についた。

コングは、

「やはり、極みブレンドか、いや夜空ブレンドにしよう」

「僕は紅ブレンド」とキュー。

「わたしはまたフルーツジュースよ」

3人はマスターに注文した。マスターは無言でうなずいた。しばらくすると、マスターは飲み物を運んできた。黙って、テーブルに飲み物をおいた。

コングはコーヒーを一口飲んだ。

「うむ・・なにか、他のお店と違う」

「どれどれ」キューも一口。

「ん・・。なんか気の抜けたような・・」

「わたしのも、フレッシュ感が・・」

3人は黙り込んでしまった。

コングは隣りにいた、痩せた男に話しかけた。

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