第30話 キュー、現代へ

 再び、ちいがミンクーの世界に行ったのは、その晩だった。ミンクーの世界も夜だった。ちいは宿屋に入った。みんなの部屋を探した。キューが部屋から出てきた。

「ちい!無事だったんだね!あ、小人じゃない!」キューはびっくりした。

「ちいだって!」魔女も出てきた。

「おや。小人の魔法がとけている。そんなはずはない。どうしてだろう」

「ちい!」ジルもコングも安堵感でいっぱいだった。

「さあ、部屋に入って」バーバラが言った。

 「元にいた世界に行っていたの。そこでも、小人じゃなかったわ」

「う~ん。もしかすると、その世界へ行くと、かかっている魔法がリセットされるのかしらね」魔女が言った。

「じゃあ、キューが行ったら、ブタの魔法もとけるのか?」コングが魔女に聞いた。

「とけるのかもね」

「実は、キューがブタのまま、満月の光を浴びても、人間に戻れなくなったんだ」ジルがちいに説明した。

「やはり、この土地の磁場が強くて、变化の魔法も良く効いているんだ」魔女が言った。

「キュー。一緒に行こう。人間に戻れるよ」

「ちょっと待った。大魔道士ドルゾーのネックレスは預かる。あぶない。あぶない。これがないと、たぶん二人は戻ってこられなくなる」

「あぶなかったね。ありがとう。西の魔女」

キューはネックレスを魔女に預けた。

 「でもね、どうやったら戻れるのか、わからないの。いつも勝手に戻るから」

「どうなんだ。西の魔女」コングがせかした。

「分からないわよ。時空の事は」

「いつだったか、岩が落ちる時に消えたね」ジルが言った。

「危険を察知さっちすると、消えるのか」コングが不思議そうに言った。

「そんなにブタだと困るの?」ちいが聞いた。

「うん。お城の門番に王子だと話しても、ブタの姿じゃ、信じてくれなかったんだ」キューが言った。

「やっぱり、一緒に行きたい。ちいの世界へ」

「キュー。行けるよ。がんばろう」ちいが元気づけた。

その時、フルームが動いた時、ジルの弓矢にぶつかった。

「あぶない!」ジルが叫んだが、弓矢がちいに向けて発射されてしまった。

ガツン!矢が壁に刺さった。ちいとキューは手を握り合っている所を、矢が飛んできてスリップした。


 キューとちいは目をつぶって、縮こまっていた。窓の外でプロベラ機の音がする。

「戻った。キュー。ここが私の世界」

「な、なんか見たこともない物ばかり・・」

「キ、キュー」ちいが照れて、目を伏せた。

「あ、また裸だ。でもブタじゃない」

「タ、タオルを・・」

「そうか、タオルは・・」

その時、下の階からママが階段を昇ってくる音がした。

「ちい?誰と話しているの?」

ドンドンと音が近づく。

「どうしよ。誰か来る!」

「ママよ。どうしよう」

ママはちいの部屋のドアを開けた。

ママは裸の少年とちいを見て、凍りついた。

「だ、誰!キャー」ママが取り乱した。

「あ、あの・・」キューは手であそこを隠した。

「ママ。違うの。これは・・」

「どうした」パパが入ってきた。

「少年がいるのよ。裸の!」ママが言った。

パパは少し考えて、

「この子はちいの友達なんだ。さっき、車の泥がはねて、服がグチャグチャに汚れてね。着替えている所だよ」パパがうまくごまかした。

「そ、そうなの」ちいがか細く言った。

「パパはこの子知っているの?そう・・わかったわ。着替えを下からもってくるわ」ママが服を取りに行った。

「ありがとう。パパ。この子は違う世界の子なの」

「うん。すぐに分かったよ。なんとく匂いでね。戻れなくなると困るから、なるべく早く元の世界へ帰りなさい」

「ありがとうございます」キューは礼を言った。


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