第26話 コングとキュー

 ダンジョンは複雑に道が分かれていて、迷いそうだった。

「あなた、名は?」バーバラが金髪の女に尋ねた。

「私はサリーよ」

「サリー。このダンジョンはどのくらいの広さなのだ?」コングが聞いた。

「地下3階まであって、その後地上に出る階段があるそうなの。でも魔物が強すぎて、地上に出るのは難しいと思う」

「なんとしてでも地上に出るさ」ジルが言った。

「最短ルートを知っている?」バーバラが聞いた。

「そうね。わかるわ」

「行こう。このダンジョンのカビ臭さにはかなわん」コングが不満気に行った。

「ついてきて」サリーが先導した。

「キュー。大丈夫?」ちいが聞いた。

「ブヒ。少しクラクラする」

「地上に出たら、お医者さんに見てもらおうね」

「ブヒ」

 その時、ダンジョンの暗闇に不気味な幽霊ゆうれいのような奇妙な物体が現れた。3体いた。

「ホローゴーストよ!逃げて!エネルギーを吸い取られちゃう」サリーが叫んだ。

コングの剣もうまく捉えられない。金色の目玉は不気味に見つめている。ジルの矢もだめだった。

「逃げるぞ!」コングは逃走を指示した。

 皆はバラバラになり、たいまつの火でなんとか走った。

キューは毒にやられ、本調子ではなかった。必死になって逃げたので、息切れしていた。

「一人になってしまった。どうしよう」

キューは暗闇の中、小さくなったたいまつの火を眺めていた。コツンコツンと足音が聞こえた。

「やばい。誰か来た。もうだめか・・」

キューは戦闘意欲をなくしていた。足音が近づいてくる。それは近づいた。

「た、たすけて・・」キューは観念した。

 「風の魔法があるだろう」コングだった。

「コ、コング!助かったぁ」キューは安堵した。

「皆とはぐれたな。大丈夫か?」

「なんとか。少しフラフラする」

「たいまつを消していい。もったいない。とっておこう。代わりに西の魔女にもらった魔法を使おう。月の魔法の小瓶だ。フタを開ければ、満月の光が出る。明るくなる」

「満月?人間になれるの?」

「そうだな。やってみるか?」

「やろう。ブヒ」

コングは小瓶のフタを開けた。バーンと光が上がり、ダンジョンの中があたり一面、明るくなった。

「コング・・人間になれた」

「明るいな。あ、タオル使うか?」

「借りるよ・・」

二人は歩き出した。

「月の魔法は、弱い魔物を寄せ付けない魔法の効果もあるらしい」

「へ~。便利だね」

たしかに、魔物は現れなかった。コングとキューは大きな広場みたいな所に出た。魔物はいない。さらに進んだ。階段がまたあった。

「下に降りる階段だ。足跡がある。ふむ。この足跡、フルームかな。たぶん皆は降りたな」

「へ~。良かった。皆は無事なのかな」

「降りるぞ」

 二人はさらに地下へ降りた。

またしばらく歩いた。

「キュー。ピエール王国がもうすぐだな。着いたらどうするんだ?」

「う~ん。王子なのだから、王・・父さんに会って・・う~ん。どうしよ?」

「やりたい事はないのか?」

「うん・・自分に自信がもてなくて・・何がやりたいか分からないんだ」

「ふむ。自信か。自分を信じるのはそう難しい事じゃない。何か事が起きたら、自分の思いを持ってみろ。自分はならこう思う。こうする。考えるんだ。たぶん感情にフタをしてあるんだろう。フタをとるんだ。今の俺の言葉をどう思う?」

「う~ん。やってみようと思う。自信を持つのが、難しくないと知って、ほっとしている」

「その調子だ。自分の思いを持て。何がしたいか。何が嫌なのか。意思をもって判断するんだ」

「ありがとう」キューは礼を言った。

二人は歩いた。早く地上に出たい。このカビくさい所から出たかった。

「う~ん。少し疲れた。休みたいよ」

「うむ。毒が回っているからな。少し休もう」

「ふ~。少し寝るかな」

「いいぞ。起こしてやる」

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