第21話 トラベラーマン

 「ん?まずい!レバーを動かしたな!」男が叫んだ。

ちいはあたりが真っ暗になり、光景がおかしくなった。そして、体が引き伸ばされ、細くなった。そして、体がペチャンコになった。グルグルに回り、やっと正常になった。ちいはクラクラと立ち上がった。木造の建物の中にいた。外を見ると、剣ミンクーがいた。今の姿ではなく、どことなく弱そうだった。剣が木で出来ているようだった。戦っているのは、いも虫のような魔物だった。

「ここは、いったいどこなの?」

そこへ、さっきの男が大きな光とともに現れた。

「見つけたぞ。誰とも話してないだろうな。何もさわってないな?」男が矢継やつぎ早に質問した。

「何もしてないわ。あなたは誰なの?」

「私はトラベラーマン。時間を管理している。さあ、くるんだ」トラベラーマンはちいを掴んだ。そして、何か機械を操作した。またあたりが暗くなり、体が細くなったり、ペチャンコになったり、気持ちが悪くなって元に戻った。

「やれやれ。もうここへは来るんじゃないぞ」

「わかったわ。あ、ポルサ!」

「ちいたん・・これ・・」ポルサは古いボロボロの本を持っていた。「世界の兵器」と書いてある。

「え!それ私がもっていた・・あれ?あ、カバンごとあそこへわすれてきたわ!」

「本を?忘れたのか?そいつはまずいな。歴史が変わってしまう」

そこへ、扉が開いた。

「今度は誰だ?」トラベラーマンが言った。

国王だった。

「あ、国王様。どうされましたか?」

「この剣ミンクー君が、資料室で本を探していた。詳しく調べたが、この「世界の兵器」の本を参考にメカニックミンクーや学者ミンクーが研究を重ね、今のミンクーの兵器化が実現したそうだ。悪いが剣ミンクー君。その本は返してもらうよ。貴重な資料として、しまっておく」

「そうでしたか・・歴史が大きく変わったのですな」トラベラーマンは複雑ふくざつな思いだった。

 「あそこは昔の時代だったの?」

「そうだ。大昔さ」トラベラーマンが言った。

「ちいさん。あなたの功績こうせきは大きい。何でも願いをかなえよう。さあ、いってごらん」

「わたしは・・またみんなと会いたい。魔法で飛ばされる前は仲間がいたの」

「ほほう。強い魔物でもいたのかい?」トラベラーマンが聞いた。

「いたわ。ローブを着た男よ。仲間が2人、本にすいこまれたの」

「ほうほう。それで魔法を使ったと」

「では、こうしよう。ローブを着た男に合う前に時を戻す。いいかね」

「戻れるの?うれしい!」ちいは喜んだ。

「トラベラーマン君。頼むよ」国王がうながした。

「分かりました。この機械を頭にはめてね」

電極がついたヘルメットをちいに差し出した。

「あの・・コングがお酒を飲む前にもどりたいんですけど・・できる?」

「うむうむ。微調整で操作すればたやすい」

ちいはヘルメットをかぶり横になった。

「ポルサ。あなたもまた助けるからね」

「うん・・」

トラベラーマンが機械を操作して、ちいはまたあたり暗くなり、体が引き伸ばされ、ぐるぐる回った。あたりが強く輝き、徐々に意識が戻った。


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