3章 ペトンの町、盗っ人ジル

第9話 人面花の誘惑

コングとキュー、そしてちいの3人はペトンの町を目指し、南の方向に進んでいた。

紫色の花を咲かせた植物が緑の液体を出していた。キューは匂いにつられていた。

「なめてみたいです」と緑色の液体を舐めようとした。コングが止めた。

「そいつは体を麻痺まひさせる植物だぞ」キューは恐くなり、植物を避けた。

見渡す限り見通しの良い草原だった。

「のどがかわいてきたわ」ちいが言った。

「町まで我慢がまんしろ」コングが答えた。

「キューものどがかわいたでしょう?」ちいが聞いた。

「ブヒー。かわきました」

「仕方ない。泉を探すか」コングはあたりを探した。

「森の向こう泉があるよ」「あるよ。泉」「いってごらん。あるよ」ピングの花を咲かせた、

人の顔がある植物がささやいた。かなりの数が咲いている。

「ブヒー。ありがとう植物さん」キューが礼を言った。

「人面花の言う事を鵜呑うのみにしてはだめだ。

この植物は巨大きょだい食虫しょうくちゅう植物しょくぶつの一部だ。人をだまし、

根が続いている大元の植物に俺らを食わす気だ。」

「見て、あたり一面みんなこの植物だわ」

「匂いで少し頭が麻痺まひしているのだ。気をつけろ。もとの草原に戻らねば」コングが言った。

「頭がガンガンするわ」ちいがフラフラして言った。「あ!大きな植物が見えてきた!」

小さな人面花が咲き乱れさきみだれていて、その先に巨大な人面花がぱっくり口を開けて、にらんでいた。

なぜか3人はその植物に向かっていた。

「まずい。植物に誘われている」コングは冷静になろうとしたが、体が言うことを聞かない。

コングは剣で巨大植物を切ろうと考えたが、緑の液体の酸で刃がだめになりそうで躊躇ちゅうちょした。

巨大食虫植物は口を大きく開けた。小さな人面花達は緑の液体をつけようと3人に迫っている。

「た、食べられちゃうよ。こわい」ちいがかぼそく言った。

その時、コングの持っている剣が白く光り輝いた。

「光った。剣が光った」キューが驚いて言った。

水滴がコング達に落ちてきた。

「雨だ!助かったぞ。植物は水に弱いはずだ」コングは安堵あんどした。

雨が植物たちに当たると、皆嫌がり、花を閉じだした。巨大植物も小さくなり、縮まった。

3人は我に返り、いちもくさんに草原に引き返した。


「こわかった~」キューが興奮して言った。

「あら、もう雨がやんでいる」ちいが空を見上げた。

「どうやら、西の魔女のまじないが効いたのだな。この剣の」コングが剣をながめて言った。

「さあ、ペトンの町が見えてきたぞ」コングが指をさした

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