第2話 夢だったのかな

「夢だったのかな」ママが下の部屋から呼んでいる。「ちい!起きなさい。ご飯ですよ」


「もう起きている」ちいは大きな声で答えた。リビングの食卓しょくたくに着くと、パパが言った。


「よく眠れたかい?」ちいは首を振った。


「あのね、パパ。ちい、すごい夢を見たの。大きなゴリラが出てきて、私のリンゴを食べたの。


なんというか、夢にしたら、はっきりしていたの。匂いも風も感じた」


パパは目を丸くして、


「それはすごいね」と言った。「ゴリラはあばれたのかい?」パパが聞いた。


「ううん。お話したの。しゃべったのよ」ちいは興奮こうふんして話した。


「その話は終わりよ。さあ、ご飯を食べて。学校でしょ」ママがをテーブルにご飯を置いた。


コングは草原をさまよっていた。風がそよそよ吹いていて、太陽が照りつける。


「腹がへったよ」コングはつぶやいた。


そこへ、一羽の大きな鳥が飛んできた。バサバサと羽をたたみ、コングの前に立ちふさがった。


「お前は誰だ?」


「俺はアーリー。この先危ないよ」


「なんでだ。なにかあるのか」


「伝えたからね~」アーリーはバサバサと音をたてて飛んでいってしまった。


コングは草をかき分け、アーリーの言うことを無視して進んだ。腹が減って忠告ちゅうこくが頭に入らなかったのだ。


しばらく進むと、大きなお城が見えてきた。しめた!とコングは喜んだ。


お城の人に食べ物を分けてもらえるかもしれない。


しばらく進むとしゅるしゅると変な音がした。突然、大きな青いヘビが現れた。


コングより大きい。ヘビは襲いかかってきた。コングは強くヘビの頭を殴った。


ヘビは面食らってよろけた。だが、すぐにコングの体をぐるぐると巻きはじめた。


ヘビは力をいれて、コングを強く締め付けた。



ちいは小学校を終えて、帰宅きたくした。学校では夢の話は誰にもできなかった。


不思議すぎたからだ。帰るとママが、


「おかえり、ちい」と笑いかけた。


「ただいま、ママ」


ちいは自分の部屋にリンゴを持っていった。あとで食べようと思ったのだ。はっとした。


昨日もあたし、リンゴを持ってベッドにはいった。ベッドでママに隠れて

リンゴをかぶりつこう思ったけど、そのまま眠ってしまっていたのだ。


あのリンゴ、どこいったのだろう?ちいはしばらく考えていたが、ウトウトしてしまい、


ベッドで寝てしまった。リンゴを持ちながら。


目を開けると、コングがヘビに締め付けられていた。ちいはびっくりして、立ち尽くした。

コングは腹ペコで力がでなかった。

「コング!大丈夫?これ食べて!」ちいはリンゴをコングに投げた。

コングは右手でリンゴをキャッチし、ムシャムシャと食べた。そし

て、全力でヘビをほどき、投げ飛ばした。


ヘビは白く閃光し、消えてしまった。老婆ろうばの声がした。「厄介なやつだ」と

「ちい。助かった。腹が減って力が出なかった」コングは恥ずかしそうにした。


「わたしはいつでも食べられるから。役に立てて良かった」ちい言った。


「あのお城へ行こう。食べ物を分けてもらえるかもしれない」コングは歩きだした。


「あのお城に?」ちいも歩いた。


「待ちなさい。食べ物なんかないよ」また老婆の声がした。


「さっきから、ばあさんの声がするけどなんだ?」


「何かしら」


「止まれと言っているのだよ。お城に入れる気はないよ。帰りな」どこからの声は叫んだ。


「いたい!」ちいが石につまずいてころんだ。


「大丈夫か。血が出ているぞ」コングが心配そうにちいを支えた。


「痛い。もう歩けないよ」ちいは泣きそうだった。

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