第3話 魔女

「仕方ないね」老婆の声がして、光が赤く輝き、老婆が現れた。「きゃー」ちいはびっくりした。


コングも目を丸くした。


「私のヘビもやっつけてしまって」老婆はちいの傷を見た。「血が少し出ているね」


老婆は青い光を手から放ち、傷口に当てた。みるみる傷が修復しゅうふくされていく。


「うわぁ。治った」ちいは喜んだ。


「魔法使いか?」コングは老婆に尋ねた。



「そうさ。この西地区では一番の魔法使いさ。お前さん達は誰だい?」


「俺は旅人だ」


「そこの娘は?」魔女が聞いた。コングもちいを見ている。何者か気になっていた。


「わたしは・・・わたしはわからない。さっきまで違うところにいたの。ここの世界じゃないもの」魔女は眉をひそめた。


(この服装も見たことないし、この子は一体誰だい)魔女は困惑こんわくした。


「とにかく、申し訳ないが、なにか食べ物はないか?腹が減って死にそうだ」コングが言った。


「仕方ないね。城へ入りな」魔女が言った。お城の中はたくさんのビンにくすりのようなものが入っていた。


見たこともない動物の剥製はくせいもおいてあった。ロウソクの炎がゆらめいていて、明かりをともしている。


魔女は奥の部屋から食べ物を出して、「ほら、お食べ」肉や果物やらが出された。コングはムシャムシャとほうばった。


ちいも果物を食べようとしたが、何かへんな食べ物だと思った。


(おいしのかしら)ちいはリンゴのような黄色のものを少し食べた。ぴりっとした酸味があるが、水分は多くて美味しかった。


「魔女さん。わたしはね、どうしてここにいるかわからないの。いつもはパパとママと3人で暮らしているのよ。

学校にも行っているし、もっと生活はゆたかなの。ただ眠ると、このせかいにいるのよ。どうしてかしら」


「どうしてかしらね。初めてだよ。そんなことを言う子は」魔女も悩んだ。


「どうやってその世界にいくのだい」魔女が聞いた。「わからない。突然引き戻される。


たぶんむこうで目が覚めると戻れるのだわ」


「それまでずっといられるのだな?」コングが聞いた。「たぶんね」ちいも答えた。


ちいは見慣れない生き物を見た。ミンクーだ。


「なあに、これ」羽の生えたもこもこした妖精ようせいだった。


「これはミンクー。空気のきれいな所しか生きられない。古くからいる妖精ようせいだ。さわってみるかい?」


魔女が聞いた。「うん、おいで」


ちいはミンクーにふれた。ミンクーはパタパタと少し跳んで、ちいの肩に止まった。


「回復させる魔法が使える妖精だよ」魔女はちいに教えた。ミンクーはちいのポケットに入った。


「こら、ミンクー。くすぐったい」そこで、パッとちいが消えた。コングと魔女はびっくり。


「ふたりで何話すのだい」魔女が言った。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る