情景

古関

宵に旧都の傾廈に登る

  宵󠄁登舊都傾廈

煙籠臺上夢神州

碧瓦平原金燭流

將仰明君囘乃覺

亭亭孤月白荒丘


  宵に旧都の傾廈けいかに登る

む台上 神州を夢みる

碧瓦へきがの平原 金燭きんしょくの流れ

まさ明君めいくんを仰がんとし めぐればすなわさむ

亭亭ていていとして 孤月 荒丘くゎうきうに白し


  夜分、かつての都の傾いた楼閣に登る

もやの籠める傾いた楼閣の上。そこに立っていると、その霞んだ視界にかつての都の姿が夢のように浮かんできた。

星天の下、人々の家屋、貴族の邸宅の碧瓦が平原のように広がり、道をゆく人々の灯火は、まるで大河のように淡く輝き悠然と流れている。

何と豊かで栄えた土地であることだろう。私は感動を奏上すべく、天子のいる宮城を振りかえる──するとどうしたことか、もやが晴れて私の夢は雲散霧消してしまった。

ただ月が天高くに輝き、その下にかつての宮殿は荒れた丘と成り果て、光を受けて白くなっているだけであった。


────


作品No. 3

七言絶句(平起こり)

押韻……下平声十一尤

サークルの部誌に載せたもの。何百年の時の向こうで、この地も月下にうずくまるのでしょうか。

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