第11話

「サークルを作るには四人以上の構成員が必要ですよ?」


 後日、総監督ギルドへ向かった俺とツィーシャはそんな事を言われた。たった二人でサークル開設に来た俺達を、受付のお姉さんは困ったように笑って白紙の羊皮紙を渡してきた。


「良ければ、サークル新設メンバーの募集をかけておきますか? 一緒に新しいサークルで頑張りたいって方は特に冒険者なんかには多いですよ?」

「じゃあ、そうさせてもらおうかな。何を書いておけばいいんだ?」

「基本はリーダーの強みとサークルの方向性、そして欲しい人材なんかが必須になってきますね」


 リーダーの性能か……。


「ツィーシャ、リーダーは俺でいいのか?」

「は? それ以外でどうするつもりなんです?」

「いや、俺には魔力がない……だけど、戦闘以外の事はできない。戦闘力が魔力基準な以上、このままじゃ募集かけても集まらないぞ」


 ツィーシャはくすりと、「分かっていませんね」と笑った。


「『それでも入りたい』って人を探すんですよ。募集なんかとりあえず正直に書いて出しておけばいいじゃないですか。今日サークルを立ち上げないと死ぬわけじゃないのですよ?」

「それもそうか……サークルの方向性、こっちは冒険者稼業でいいよな?」

「はい。それが一番色々できるかと。隊長さんやロナさんから依頼を融通してもらうんでしょう?」

「ああ。それが多分一番の近道だと思う」


 サラサラと募集文を書きながら話を進める。だが、一言に冒険者稼業と言ってもその仕事は様々だ。冒険者とは言わば『自由な何でも屋』だ。


 だから……と俺は欲しい人材の文面と共に一言書き添えた。


 ――見返したい誰かがいる人、歓迎します。


 ◇


 そしてその後、俺達は騎士団が駐留する施設までやってきた。門番をしている若い騎士に、とりあえず話しかけてみる。


「あの、悪いんだけどグレースさんに会わせてくれないか? ちょっと相談があって……」

「うん? グレースさんなら今は居ないよ。街のパトロール中だ」

「パトロール……隊長自らがか?」

「ああ。困った話だ。そんな雑用、下級騎士に任せておけばいいのに、「自分の目で王都の平和を確かめたい」って言っても聞かないんだよな」

「そうか……悪かったな、ありがとう」


 それなら、街を歩き回ってみようか……とした所で、若い騎士に呼び止められた。


「待ってくれ、褐色の少女を連れた黒髪の少年……君はもしかして、あの『ミステリーキラー』か?」

「ミステリー……いや、どういう意味だ?」

「ああ、悪い。古い言葉で言うなら『怪異殺し』。王都西方に広がる森にいたとんでもねえ尾を持ってる化物を単独で討伐したって話じゃないか」

「それなら、俺だな。運が良かっただけさ。むしろ手柄の横取りをしたようなものだ」


 そう言うと、騎士は「謙遜するなよ」と軽快に笑った。


「手柄を横取りされるような間抜けは騎士団にはいない。グレース隊長まで出てたんだから、間違いなく君の功績だ。もっとごつい男を想像していたが……いや、済まない。僕は君を尊敬する。騎士団の中で待っておくといい」

「いいのか? 部外者をそんな簡単に入れて……」

「君はグレース隊長の客だ。なら、相応の対応をしなくてはな。見たこともない剣を使うとも聞いた。騎士団では君はちょっとした時の人なのだよ。良ければ、話を聞かせてくれ」


 若い騎士はもう一人の門番に声をかけて、俺達を騎士団の中に迎え入れた。


 白く堅牢なイメージを持たせる建物は十五階建てとはいかないまでも、それなりに大きい……少しずつ、俺の世界が広がっていく。その感覚が何だか心地よかった。

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