ーepisode zero_seven

 『三千八百年 十月三十一日 水喰凪海花』

 

 そっか。

 

 もう夏も終わるんだなぁ。

 随分涼しくなった空気を食べた。

 久しぶりに外に出た。多分二ヶ月ぶり。

 出た。と言うより抜け出してきた。

 好きなアーティストが八駅隣の会場でハロウィンフェスに出るからちょっとチラッと見に行きたい。

 病院の中は暖かかったもんなぁ……。

 裸足ではいているスリッパに病衣。

 ずっと暖かいところにいたから私の体はやっぱり寒がってる。

 少し走っただけだけど最近はほとんど動いていないからこれだけで息が切れる。

 ハロウィンだもん。

 もっと可愛い仮装をしたい。

 病院の駐車場の出入口の方まで何とか走る。

 駐車場には人っ子一人居ない。

 三台の車が無駄に広いコンクリートの地面の上に止まってるだけ。

 なんか、もうここまで来ると爽快だな。

 「はぁ……はぁ……」

 ダメだぁ……。

 息切れが止まらない。

 もっと運動しないとなぁ……。

 視界がぼやける。

 財布持ってくるの忘れたじゃん。

 これじゃあハロウィンフェス会場まで見に行けない。

 「はは……」

 馬鹿じゃん。

 なんかもう自分で笑えてくる。

 一回戻るか。

 病院へと踵を返す。

 そのまま進もうとすると、ぼやけた視界の端によく知った人影が現れた。

 すっかり忘れていた。

 今日面談じゃんか。

 「やっほ!先生」

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