ーepisode zero_three

  「朝か…。」

  仕事か……。

  溜息が出る。

  どんなに足掻いた所で仕事が無くなる訳では無いのでシャワーを浴びて着替える。

  顔を洗い歯を磨く。腹は減ってないから朝ご飯は食べずに評価した生徒の作文と携帯をカバンに入れ家を出た。

  学校は近い。

  自転車で行く程の距離では無いが、歩くのは嫌だ。

  なんと言ったって疲れる。

  休日出勤。

  その単語を思い浮かべただけで心が折れそうだ。

  何だよ、休日出勤って。

  休日なのに出勤してるとか休日じゃあ無いだろ。

  って思っていた子どもの頃を思い出す。

  清々しい都会の朝。

  鳥が鳴いて、車が鳴いて、全ての音が木霊している様な朝。

  時刻は午前七時丁度。後十一時間で、武道館ライブが始まるから、今日はその為に仕事を頑張ろう。

  そんなこと考えていると、学校に到着。

  コピー機を買っておけばよかった。

  学校に来た理由は唯、作文のコピーを取っておくためだけ。

  平日に早く出勤すれば良いだけの話だが朝早く起きるのは嫌だ。

  それに早起きしてもコピー機を他の教員に使われていた時の辛さは考えるだけで後悔が身に染みる。

  自転車を停め、学校に入り靴を履き替え階段を上がる。

  「こんにちは!」

  途中、運動部の生徒から挨拶され、自分も挨拶を返す。

  おはようございますだろ。

  時間的に。

  職員室に入りコピー機に直行。

  またその途中、数名の教職員と挨拶を交わす。

  コピー機に作文を読み込ませ、コピーを始める。

  ザッザッザッザッ…

  物販、早く行かないとな。

  ペンラ、一人の上限の二個は欲しい。

  

  ピロン

  

  コピーを続けるコピー機をぼーっと見ていると、ポケットにしまっていた携帯が振動した。

  メール…

  取り出し画面を開くとそこには一通のメール。

  指紋認証でメールを開く。

  

  「…え」

  

  思わず零れ落ちた、声。

  「どうしたんですか?」

  コピー機近くの教卓に座っていた理科教師の西原先生が、はてなとこちらを見上げ首を傾げる。

  「あ、いや、何でも、ない、です。」

  まずい。なんでなんでなんで。

  ザッザッザッザッザッザッザッ…

  一定の速度で鳴る音が大層鬱陶しい。

  どういう事だ?

  何でこの直前で……

  





  

  武道館ライブ……中止のお知らせなんだよ。

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