「蒼の在り処」三人声劇台本
深海リアナ(ふかみ りあな)
「蒼の在り処」
═ 登場人物(その他)═
所要時間:約25分 女1・不問2
天音(あまね)···女
蒼(あお)···不問 たまは 男
久遠(くおん)···不問
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
天音:
(N)これは夢か幻か。
事故で亡くしたはずの恋人が今も私のそばにいる。
悲しみに暮れていた私の前に現れたのは
「人の命や時間、記憶を操作出来る」謎の人。
何故私の前に現れたのかは···今も分からない。
その人の名前は···。
天音:久遠!そこにいるのはわかってるのよ。
久遠:ちぇ、バレてたか。
天音:いつも言ってるけど、
こそこそ私に着いてくるのはやめてちょうだい。
プライバシーってものがあるのよ、わかる?
久遠:だってさー天音、
蒼と待ち合わせしてるんだろ?
堂々とここにいたらバレるじゃないか。
天音:いつも思うけど、
なんでそんなに蒼に会うの嫌がるわけ?
久遠:んー、まぁそのうち話してもいいかな。
とにかく今は会うわけにはいかないんだよ。
天音:ふーん、へんなの。
久遠:色々理由があるんだよ!
天音:仕方ないなぁ、
とりあえずあんたの事は内緒にしとく。
けどそのうちちゃんと話してよね!
ただでさえあんた、謎が多いんだから。
久遠:わかったよぉ。
天音:あ、そんな話 してたら
蒼 来たみたいよ?姿、消さなくていいの?
久遠:やばっ!
天音:蒼ーーーーっ!こっちこっち!
蒼:悪い、待った?
天音:ううん、全然!
今知り合いに会って少し喋ってたから。
蒼:知り合いに?
久遠:(おい!!!!)
天音:あー、ごめんごめん、何でもない何でもない。
蒼:そうなんだ、じゃあ行こうか。
天音:うん!楽しみにしてたんだぁ、水族館!
蒼:ずっと言ってたもんな、行きたいって。
天音:だから早く行こうよ!ねっ!
蒼:(手を引っぱられて笑う 蒼)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
天音:わぁ~···。
蒼:すごいな。色んな魚が泳いでる。
天音:うん。
蒼:······。
天音:気持ちよさそ~···
あの魚の群れ、皆 進行方向 揃ってる!
すごーーーーーい!
あ、あのお魚、身体がなんかキラキラしてる!
わぁ···綺麗~!
蒼:ぷっ。
天音:え?なに?
蒼:あはは、ごめん。
本当に楽しそうだなって。
天音と一緒に来れてよかったよ。
天音:なんで笑うのぉ?
蒼は楽しくないの?
蒼:楽しいよ。
水槽見るのも楽しいけど、
天音見てる方が楽しいかもな。
天音:なんでよー!
蒼も一緒にお魚見ようよ!お魚!
蒼:···可愛いね。
天音:ねー!可愛いよね!
蒼:魚じゃないって、天音がな。
天音:へぇ!!?
蒼:魚のこと「お魚」って言うとことか、
その反応がね。
天音:もー!からかわないでよ!
蒼:からかってないって。
本当に可愛いよ。
天音:可愛いは禁止!
蒼:じゃあ言わない。
天音:(しょんぼりして)え~···。
蒼:あはは、どっちがいいの。
天音:嬉しいから言って欲しいけど、
言い過ぎは照れるからダメ。
蒼:わがままだなぁ。
天音:嫌になった?
蒼:ならないよ。
天音:よかった!
蒼:あ、天音、後ろ。
天音:なに?···わぁ!!!!
びっくりしたぁ!!なんだ亀かぁ···って でっか!
人乗れるでしょこれ。写真写真···
蒼:竜宮城に連れてってくれそうだな。
天音:あぁ~···去ってゆく~···
蒼:水、透明に見えるけど
結構不純物で濁ってるんだ。
見えなくなっちゃったな。
天音:行っちゃった。
蒼:······。
天音:······。
蒼:次に行く?
天音:ねぇ蒼。
蒼:ん?
天音:この水槽の水って海水なのかな。
蒼:水槽の水?
天音:うん。
蒼:あぁ、この水族館の水は海からポンプで
汲み上げてるって聞いたことあるよ。
天音:そしたらこの水は何億年も前から
ずっとあるんだね。
蒼:どうした?いきなり。
天音:聞いたことがあるの。
水は記憶を宿してるって。
ずっと遠い昔から存在してるんだなぁって。
蒼:不思議だな。
天音:色んな人や出来事をこの水は
映してきたんだなぁって思うと
ちょっとロマンを感じる。
蒼:そうだな。
天音:私は蒼のことは沢山覚えてる。
色んな思い出とかその時に感じた思い。蒼は?
蒼:覚えてるよ。天音に出会った時のことや
色んなところに行ったこと、気持ちも。
天音:ほんと?
蒼:本当だよ。
天音:そっか。ならよかった。本物の蒼だ。
蒼:なんだそれ。
天音:ううん、なんでも!
ね、海月も見よ!海月!
蒼:いいけど、まだ先だよ?
順番に見なくていいのか?
天音:あ~そっかぁ。じゃあ順番に!
蒼:海月、好きなんだ?
天音:なんかさぁ、海月って···
蒼:うん。
天音:蒼みたいだよね!
蒼:え。どういう意味。
俺、頭軽そう?
天音:違う違う!そういうことじゃなくて。
なんか掴みどころがなくて、静かで繊細で、
不思議な感じが蒼みたい。
蒼:喜んでいいのかそれ。
天音:褒めてるんだよぉ。
蒼:そ、そっか。ありがとう。
天音:ふふふ。
蒼:なんだよ、急に。
天音:今日水族館に来たの正解だったなって。
蒼:そうなのか?
天音:蒼の色んな顔見れたし、
色々考えてること知れたし。
蒼:俺、そんなに話したか?
天音:言葉にしなくても分かることはあるんだよ。
蒼:そっか。
天音:蒼ってさ、自分のこと語らないじゃない。
だから、こうやって同じ時間を共有して、
少しずつ知っていくのが、なんか幸せなの。
蒼:聞いてくれたら全然答えるのに。
天音:そういうんじゃないんだってば。
1個ずつ知っていくのがいいの。
蒼:そういうもんか?
天音:そういうもんよ。
蒼:なんか、俺としてはもう何年もこうやって
付き合ってるのに「まだそこ?」みたいで
ちょっと凹むなぁ。
天音:あはは、いいじゃない。
何年経ってもまだ知らないとこがあるって、
知る楽しみがあって。それに···。
蒼:···それに?
天音:なんでもない!
蒼:なんだよ。
天音:恥ずかしいから言わない!
蒼:あ、そういうこと言うんだな?
この俺にそういう事言ったら···
どうなるか分かってるな?
天音:わかんない!
蒼:そういうこと言うやつは···!
天音:あはは、ちょっと待って!
流石に人がいるとこでそれはダメだって!
言うから!言うからそれ以上顔近づけないでぇ!
蒼:ならよし!
天音:もー、蒼の意地悪。
んーーー···それにさ、何年経っても
ラブラブでいられるのは嬉しいし···
蒼:ぷっ
天音:ほらーーー!笑うーーー!
だから言いたくなかったのにーー!
蒼:ごめんごめん。
嬉しいんだ?じゃあさっきあれだけ「ダメ!」って
大騒ぎしてた事も実は嬉しかったりして。
天音:うるさいなーもー!
蒼:照れるなって。いいじゃん。
そんなとこも可愛いよ。
天音:もーすぐそういうこと言う!
蒼:あ、そう言ってるうちにほら、
海月のとこまで来たぞ。
天音:え!海月!?あ、ほんとだぁ!
蒼:ふふ、他のとこ全然見てなかったな。
天音:なに?
蒼:なんでも。
天音らしくて好きだよ、そういうとこ。
天音:やだ、突然言わないでよそういう事。
蒼:照れてる?
天音:て、照れてない!
蒼:ほんとに?
天音:···て、照れてる。
蒼:あはは。
天音:······海月、綺麗だねぇ。
蒼:そうだな。
天音:透明で綺麗。
蒼:うん。
天音:·········。
蒼:·········。
天音:なんか、見とれちゃうね。
蒼:夢中で見ちゃうな。
天音:······ねぇ、蒼。
蒼:ん?
天音:···手繋ご。
蒼:いいよ。
天音:ふふ。
蒼:······天音。
天音:ん?
蒼:こっちおいで。
天音:うん。
蒼:ずっとこうしていられるといいな。
天音:ずっとこうしていようね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
蒼:楽しかったな。
天音:うん、また来ようね。
送ってくれてありがとう。
明日は何してる?
蒼:日曜だからな 、
とりあえず9時までがっつり寝るかな!
起きたらまた連絡するよ。
天音:待ってるね。おやすみなさい。
蒼:また明日な。
天音:·········。
天音:久遠。いるんでしょ?
蒼、帰ったよ。
久遠:いやぁ、いつもながら鼻血が出るほど
ラブラブだな二人は。
天音:ねー、本当にやめない?
人のデートにまで着いてくるの。
恥ずかしいんだけど。
久遠:またまたぁ。
蒼に夢中で僕がいるの忘れてたくせに。
天音:うっ。
久遠:図星かよ。
天音:だって、いちいちあんたの事気にしてたら
楽しいデート出来ないじゃない!···って、久遠?
久遠:ん?
天音:なんか、あんた、体が透けてない?
久遠:え!?あ···。
天音:どうしたのよ。どこか悪いとか!?
久遠:これは···ダメなやつだ。
天音:どういうこと?
久遠:悪い、天音。
天音:だからなんなのよ、ちゃんと説明してよ。
久遠:蒼の命···もうすぐ尽きるかも。
天音:え!?
久遠:タイムリミットが近づいてるみたいだ。
天音:全然わかんないよ。
蒼、また死んじゃうの!?なんで!?
久遠:蒼が、僕のこと完全に忘れかけてる。
天音:完全に?心のどこかでは、覚えてたってこと?
久遠:そう。けど、天音との毎日の中で
僕は蒼にとって必要ではなくなってきたみたいだ。
天音:久遠···、あんた一体···
久遠:僕は蒼が幼い頃作り出した幻の存在。
天音:幻の存在?魔法使いじゃなくて?
久遠:魔法使いだなんて一言もいってないよ。
天音:そうだけど、蒼を生き返らせてくれたり
他にも色々出来たりするから私てっきり···
久遠:それが出来たのは、蒼が孤独で
僕を必要としてくれていたから。
彼の願望が僕を生み出したんだ
けれど今は天音に心を奪われ僕は必要ではなくなった。
天音:必要なくなったら久遠はどうなるの?
久遠:消滅する。
天音:そんなのダメだよ。
久遠:けれどそれで蒼は救われるんだ。
天音:久遠が存在するってことは、蒼が孤独って事で、
その孤独が救われれば久遠は消えて、蒼も消えて···
そ、そんなの···
久遠:でもそうしたら天音がまた独りになってしまう。
天音:私の事なんかどうでもいいよ!
ねぇ、消滅ってあんたはそれでいいの?
忘れられたまま消えちゃっていいの!?
久遠:よくない。僕が消滅したら、
蒼の、天音との未来がなくなっちゃう。
天音:だからそういう事じゃなくて。
久遠:やだよ、僕の願いは二人が幸せになることなのに。
出来たら近くでそれを見ていたいのに。
天音:なにか···なにか方法はないの?
久遠:あるにはある。
天音:私が出来ることなら何でもするから、教えて。
久遠:蒼が孤独を忘れず、受け入れること。
天音:···でもそれ、私何も出来ない。
久遠:そうでもないよ。
天音が過去を引っ張り出して、
その上で救ってあげれば。
天音:孤独な過去をひっぱりだすなんて···そんなの。
久遠:蒼を救えるのも、二人の未来を
継続させる力を持つのも君しかいないんだ。
天音:そうすれば、久遠も助けられる?
久遠:···きっと。
天音:···やってみる。蒼には少し嫌な思いさせるけれど。
明日蒼と会って、色々話してみる。
久遠:天音に···全てを託す形になって、ごめんね。
天音:それで皆が幸せになれるなら。
久遠:頼んだよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(SE:LINE音)
天音:来た!
(SE:通話音→蒼、電話に出る。)
天音:もしもし?蒼?おはよう。
蒼:天音、おはよう。
どうした?急に電話してくるなんて。
天音:あ、そっか。初めてだねこんなこと。
こ、声が聴きたくなって。朝から。えへへ。
蒼:そっか。俺もだよ。
天音:あのね、今日空いてる?
蒼:天音に会えるなら予定空けるよ。
天音:もー、会話の先回りしない!
蒼:あはは。
天音:会いたいの。行っていい?
蒼:いいよ。
天音:じゃあ支度してすぐ行く。
蒼:待ってるよ。
天音:うん、また後でね。
久遠:天音···大丈夫?
天音:···うん。頑張る。
久遠は来ないの?
久遠:今日は···僕がいない方がいいと思って。
天音の邪魔になるから。
天音:ありがとう。じゃあ、行くね。
久遠:天音!
天音:ん?
久遠:こっち来て。手、出して。
天音:うん。···うん?なんか、温かい。
久遠:勇気が出る魔法。
天音:あはは、やっぱり魔法使いじゃない。
久遠:かもね。
天音:行ってきます。
久遠:蒼を頼む。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(SE:チャイムの音)
蒼:いらっしゃい。上がって。
天音:お邪魔します。
蒼:アールグレイ好きだよね?
ちょっと待ってて。
天音:蒼。
蒼:ん?
天音:その···
蒼:今日、どうした?
ずっと落ち着かない顔して。
天音:今日は聞きたいことがあって···来たの。
蒼:わかった。
天音:···蒼?
蒼:···それで、何?何でも聞いて。
天音:目の前に正座で座られると···なんか···。
蒼:あぁ、ごめん。つい聞く姿勢に。
天音:あのね···
蒼:うん。
天音:蒼の···過去の話を、聞きたくて。
蒼:どれくらい前のこと?
天音:子供の頃の話。
蒼:子供の頃···。
天音:嫌なことは全然、話さなくていいの!
でも出来たら今の蒼を形作った、
そのルーツを知りたいっていうか···!
蒼:今の俺の?
天音:子供の頃、どんな子だったのかなぁ···って。
蒼:···俺は、生まれた時から叔父と叔母に育てられてて、
本当の両親には捨てられたらしい。
物心ついた頃からそう言われて育ったから
叔父と叔母に愛されてない事を受け入れてた。
···受け入れてたと···思ってた。
天音:蒼···。
蒼:本当は周りの家族に憧れては
自分と比べて他人を憎んだりもしてた。
その方が悲しむよりずっと楽だったから。
そんな俺に友達なんていなかった。1人も。
天音:·········。
蒼:ごめんね。だから俺の過去の話なんて
何も面白いことないんだ。困らせてごめんな。
天音:大丈夫だよ、もっと聞かせて。
蒼:天音は···なんでこんな話聞きたいんだ?
天音:それは···。
蒼は···私の事本当に心から愛してくれるけれど、
時々、遠くを見る癖があるから。
蒼:遠くを?
天音:そう。遠くをぼんやり見てる蒼は、
どこか寂しそうで、
私はそこに居ないみたいに感じるの。
だから何か、蒼が心につっかえてるものが
あるんじゃないかって。
蒼:ごめん、そんなつもりはなかったんだ。
寂しい思いさせてごめんな。
天音:いいの。
ただ、蒼の心の深いところが見えなくて。
それを知りたいなって、思ったの。
蒼:そっか。
ならちゃんと話すよ、天音には。
俺は本当はそんな良い奴じゃない。
妬みと嫉妬だらけの欠陥人間だよ、今も。
天音:そんなこと。
蒼:天音がいない時、何を考えてるか知ってる?
···本当は、心も体も縛り付けて
自分のものにしておきたいって
そんなことばかり考えてる。そんな人間だよ俺は。
蒼:人を···信じられないんだ。
いや、信じられなかった。天音に出会うまでは。
天音:私に出会ってから···変わったの?
蒼:表情が豊かで素直で正直で···
こんな俺に真っ直ぐ飛び込んできてくれる
天音に出会ってから、
やっと人を愛せるようになったんだ。
天音が幸せなら俺はそれでいいって、
初めてそう思えた。
天音:だから蒼は···私に合わせてくれるのに、
自分を語らなかったのね。
蒼:それもある。けど、知られたくなかったんだ。
こんな醜い俺のこと。実際今だって、
「嫌われても仕方ない」と思いながら話してる。
天音:嫌いになんてならないよぉ!
蒼:天音ならそう言ってくれると思ってた。
けど、嫌になったらいつでも離れていいから。
天音:離れないよ。これまでの話を聞いて、
私もっと蒼のこと知りたくなったよ。
信じて話して。ちゃんと受け止めるから。
蒼:ありがとう。
こんな俺だから友達はいなかった。
独りは寂しかったよ。
でもある時、初めて友達が出来たんだ。
男か女か今でも分からないけれど、
俺の心にズカズカ入り込んできて、
無理矢理 心をこじ開けてくれた初めての友達。
天音:たった一人の···友達。
蒼:そう、名前は···なんて言ったかな。
天音:思い出して!その子の名前。
なんて言うの!?なんて呼んでた!?
蒼:名前は···たしか···
天音:頑張って!
蒼:···久······、
天音:···久·········!?
蒼:えっと······久······。
天音:·········。
蒼:······久遠。
天音:·········!!!
蒼:久遠だ!俺の友達。
久遠:やっと思い出してくれたな。
天音:久遠!なんでここに。
久遠:名前、呼ばれたからね。
蒼:···く···おん?
久遠:よく思い出してくれたな、蒼。
蒼:あぁ、久遠!俺のたった一人の友達!
天音:よかった···よかった···!
蒼:天音は、久遠の知り合いだったのか?
天音:そう···だよ。うん、知り合いだったの!
蒼:あれ···でもなんか、久遠···子供のままだ。
久遠:そこまでは覚えてないよな。
僕は蒼が作り出した存在なんだよ。
だから歳を取らない。
蒼:そうか···そうだ。
独りだった俺は「友達が欲しい」って、
見えないはずの存在を生み出した。
久遠:それが僕。
蒼が僕を必要としたから再び僕は現れた。
そして僕は君の願いを叶えた。
蒼:願い?
久遠:蒼は一度事故で死んだんだよ。
蒼:え···。
久遠:けれどその記憶を消して生き返らせた。
天音とまた、生き直したいと願うその強い気持ちを
君は死ぬ時僕に託したから。
蒼:そうだったのか。
天音:それ、もう話しちゃってもいいの?
久遠:大丈夫。蒼は全てを思い出して受け入れた。
天音:じゃあ。
久遠:だから、僕の役目はもう終わり。
蒼:え?
天音:どういうこと?
だって蒼が救われれば久遠も もう消滅しないんじゃ。
久遠:消滅はしない。
僕は蒼の中に帰るだけ。
天音:いなくなっちゃうの!?嫌だよ!
蒼:よく分からないけど、
俺も折角 久遠とまた出会えたのに···!
久遠:蒼。大丈夫。
君と僕はいつでも一緒だよ。ずっとね。
天音:私は?
久遠:君には蒼がいるでしょ?
もう邪魔しないから、
思いっきり蒼と幸せになって。
天音:嫌だ···久遠!
久遠:蒼に最後のプレゼント。
君に未来をあげる。
ずっと、天音と幸せにね。
蒼:久遠!
天音:久遠が···蒼と重なっていく···。
······待って久遠!!!!!
久遠:さよなら。
蒼:久遠!!!!
天音:(天音号泣)
天音:(M)それからの蒼は
今までの重い荷物が降りたように
綺麗に笑うようになった。
時々、蒼の笑顔の向こう側に久遠が重なって見える事は
またいつか、蒼に話そうと思う。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
蒼:天音!支度出来たか?
天音:待ってぇ!まだメイクがぁ!
蒼:そんなばっちりにしなくても天音は可愛いよ。
天音:もう、わかってないなぁ。
好きな人の前ではいつでも可愛くいたいんですぅ!
蒼:わかった、待ってるよ。
どうせだから紅茶でも飲んでからゆっくり家を出よう。
天音:私アールグレイね!
蒼:了解。
天音:(M)あれから5年。
私たちは一緒に住んでいる。
幸せな毎日の中で、ふとあの時の事を思い出し
二人して笑いながら話す。
天音:んー、やっぱり蒼の淹れるアールグレイは最高ね。
蒼:いつでもお淹れ致しますよ、お姫様。
天音:うふふ、よろしくってよ。
でも私「お姫様」じゃなくて
ちゃんと名前を呼ばれたいなぁ。
蒼:ふふ、天音のためならいつでも。
天音:うん、ありがとう。
あ、やだもうこんな時間!
5年ぶりの水族館、開園時間に間に合わない~!
蒼:いいじゃないか、ゆっくり行こ。
これからはいくらでも時間はあるんだから。
天音:それもそうだね。
蒼:じゃあ行きますか!
天音:うん!
蒼:あ、天音。
天音:ん?忘れ物?
蒼:うん、大事な忘れ物。
天音:何?
蒼:愛してるよ。
天音:あはは、うん!私も!
天音:(M)この世界は愛で出来ている。
そう思える今を作り上げられたのは、
あなたと出会ったから。
頼りないけどとても優しい物語は
これからもずっと続いていく。
あなたと二人、思い出という形の
記憶を水に映して。
[完]
「蒼の在り処」三人声劇台本 深海リアナ(ふかみ りあな) @ria-ohgami
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