6. 「受付」

 重苦しい扉を開け中に入ると、目の前に受付が見えた。入口の両サイドには来訪者用のソファが置かれており、左右には長い廊下が続いている。ソファには、先客が座っていた。僕から見て左側のソファには、豊かな白髭と白い口髭を蓄えた老人が座っており、彼の目はどこか遠くを見据えていて、僅かに微笑しているように見えた。その向かいには、僕よりも若く見える金髪のやせ細った女性が俯きながら座っていた。彼女の両手首には薄汚れた包帯が巻かれていた。


 僕はまっすぐ受付へと向かった。受付の男は不愛想な顔で対応しながら、僕にいくつかの書類を渡した。書類を記入し、本人確認を済ませる。未成年者の自殺ほう助は認められていない。十分ほどで手続きは終わり、会計となった。一律五十万円。これから死ぬのにお金を払うなんて馬鹿らしい気もするが、死ぬためにも結構お金がかかるのだ。


 僕はあらかじめ用意しておいた封筒から札束を取り出し手渡した。念入りなチェックの後、受付の男は四番と書かれた番号札を僕に渡し、待つように伝えた。もう既に誰か一人死んだのだろう。僕は番号札を受け取り、老人の座っている方のソファへと腰かけた。

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