第2話 責任とって、責任
「えっ、ちょっ!?」
「それで話があるんだけど着いてきてくれる?」
俺はあまりの突然の出来事に意味が分かず慌てふためくが天王寺さんは、そんなこと知ったことではないと言わんばかりに淡々とそう続ける。
「ありがとう、じゃあこっち着いてきて」
「いや、まだYESともNOとも言ってないけど!?」
そして、彼女は確認を取ってきたにも関わらず俺が答える前に一方的にそう告げると、俺の腕を掴みやや強引に引っ張ってどこかへと連れ出すのだった。
「あっ、ちなみに勝手につけてきた人がいたら、私...何するか分からないから。その時はよろしく」
ざわめく教室に一言そう言い残して。
*
「ふー、やっとこれで2人で落ち着いて話せるね」
天王寺さんに手を引かれるままに少しさびれた様子の空き教室へとやってきた俺の前で、天王寺さんは息をつきそう笑いかけてくる。
なんて可愛い笑顔なんだろうか。って、そんな場合じゃない!
「いや、「落ち着いて話せるね」じゃなくて俺、授業始まっちゃうんだけど。遅れちゃうんだけど」
「大丈夫、私もだから」
「大丈夫な要素どこ!?」
「緑川くんは私と話すの...嫌?」
彼女は顔を伏せると少し悲しそうにそんなことを呟く。
「いや、全然嫌とかじゃないけど...」
「良かった! ...嬉しい」
俺が慌ててそう返すと彼女はガッツポーズした後に、少し恥ずかしかったのか顔を赤くしながらそう口にした。そして、対する俺はそれ以上「帰りたい」と言うことが出来なくなってしまった。
「それで俺に何の用なんですか?」
仕方ないので俺は天王寺にそう尋ねることにした。
「......もしかして、緑川くん私のこと誰か分からない?」
「えっ?」
すると、彼女は一瞬険しい顔をした後に遠慮がちにそんなことを口にした。そういえばさっきも「やっと会えた」とか言ってな。
「もしかして俺と天王寺さんって知り合いだったりする?」
「っ。もしかしなくても...忘れられてるパターン?」
彼女は一瞬人でも殺すのではないかと思うほどの冷たい顔になったかと、思うと今度は明るい顔にパッと切り替わりトーン高めにそんなことを尋ねてきた。
「ごめんなさい」
俺は一瞬あのことを言おうか迷ったが、再会したばかりの相手に聞かせるには重すぎる話だと思い直し、結局言わずに素直に謝ることにした。
「......いや...まぁ、あの頃の私地味だったししょうがない。そんなに頭下げなくても大丈夫」
完全に悪いのは俺なのだが天王寺さんはそん風にフォローしてくれる。優しい。
「いや、本当にごめん。もし、良ければその思い出話とか聞かせてくれない? そうしたら、思い出せるかもだし...」
「.........ごめん、断る。よくよく考えたら私あの頃の私のこと嫌いだから、思い出して貰ったら困るかも」
「えっ!?」
俺は天王寺さんのまさかの返答に驚きを隠せない。
「...じゃあ、初対面ということでよろしく。あっ、私天王寺 詩織です。好きな食べ物はイチゴ、趣味は——」
「いやいやいやいや、ちょっと待って」
「んっ...どうかした?」
そして、何事もなかったかのように手を差し出し自己紹介を始めた彼女に思わず俺はツッコミを入れる。
「「どうかした?」じゃなくて、俺と天王寺さんは知り合いなんだよね?」
「うん」
「なら、出会った時のこととか話してくれれば」
「話さない」
「なんで!?」
あまりの即答に俺は目を丸くし固まることしか出来ない。
「その方が私にとって利益があるから」
「うーん、まぁ、天王寺さんがそれでいいならいいけど」
てっきり、さっきまでの様子だと彼女は覚えていて欲しそうだったが、彼女がそういう以上は野暮ってなもんか。
「あっ、でも、責任とって、責任」
「一体なにが!?」
すると、突然彼女は思い出したかのように俺の手を握ると、そんなことを口にした。
「えっと、私のことは忘れててもいいけど責任はとってってこと」
「だからなんの責任!?」
「それは秘密。でも、緑川くんには責任を果たす義務がある。...私、緑川くんのせいで人生狂わされちゃったし」
彼女は顔を真っ赤に染め恥ずかしそうにボソッとそう漏らす。一体過去の俺は彼女になにをしたと言うんだ。色々と不安で仕方がない。
「お願いだから事の詳細を教えてくれ。本当にお願いだから」
「でも、断る」
「せめて、そこは「だが」断ってくれない?」
「それも断る」
「さっきから断ってばっかりじゃん」
「ふふ、相変わらず緑川くんで遊ぶのは楽しい」
俺が嘆いていると天王寺さんは自分の口に手を当てクスッと笑みを零す。
「いや、俺今それどころじゃないから。本当に俺が何をしたのかで不安で胸いっぱいだから」
「大丈夫、大丈夫、責任といってもそんな重たいものじゃない」
「じゃあ、さっきの「人生が狂わされた」云々とかも冗談——」
「いや、事実」
「どこが重たくないの!?」
笑っていた彼女にハッキリそう言い切られてしまい、俺の不安はより一層強くなる。
「じゃあ、責任...今度はちゃんと覚えておいて」
「っっ!?」
そしてそんな俺のよそに彼女は俺に近寄ると耳元でそう囁き、またも俺を軽くギュッと抱きしめると呆然とする俺を1人残し空き教室を出ていってしまうのだった。
尚、当然のごとく俺は初授業に遅れることとなったことをここに記載しておく。
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次回「なんで天王寺さんがいるの?」
投稿遅れてすいせまん。ようやく部活も終わって一時間くらいなら時間作れるので今日からなるべく毎日投稿頑張ろうと思います。
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では!
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