三日坊主 3/4
三日坊主の力で母親から一人暮らしの許可を得た
何にも縛られない生活に、生まれて初めての自由を感じていた。
「ありがとう
肩に乗っかる坊主に最大級の感謝を述べる。しかし三日坊主は変わらず目を閉じ、
「
「次…?次って、まだお願いできるの?」
「もちろんだ。
ブルル。
あの母親の意思を変えるためにやったことは『間食を我慢する』だけ。いったい三日坊主の力の天井はどこにあるのだろうかと想像すると、
「三日坊主…。俺、今の職場が嫌なんだ。優しい人はいるけど、上司がパワハラ
「
「そ、それってもしかして…スマホが触れないってこと…?」
「スマートフォンのみならず、フィーチャーフォン、タブレット類、パソコン、テレビゲーム等も禁ずる。」
若者のスマホ依存症が叫ばれている昨今。
(明日から三連休。休み中に触れないのはキツイけど…、通勤電車でふとした瞬間にスマホ触っちゃいそうだよな…。)
うんうんと悩んだ結果、決断する。
「わかった、
「あいわかった。」
三日坊主の目がぎょろりと開く。
「これより72時間後、8月12日の20時12分33秒まで電子娯楽を禁ずる。禁を破った場合は相応の罰が下る。」
電子娯楽禁止生活、一日目は地獄だった。
起きたらまずスマホでSNSをチェックしたい。
ベッドで寝転がりながら動画を観たい。
本を読むにしても
テレビゲームもできない。
「なぁ三日坊主。スマホで友達に連絡するのはアウトかな?」
「連絡にSNSを使用するというのならばそれは娯楽に入る。電話での連絡なら許可しよう。」
「電話番号なんて知らないよ…。あっ、というか友達いないわ。」
「
「普段やらないことをやるのも楽しいねぇ。これなら三日なんてすぐに終わりそうだ。」
彼の言う通り、三日はすぐに過ぎていった。
「
「いやぁ、意外と楽しく過ごせたよ。全然我慢って感じでも…。」
「スマートフォンに連絡が来ているはずだ。」
「これ…。」
「
そう言って三日坊主は再び目を閉じる。
「かわいい彼女が欲しい。」
「会話を三日間我慢せよ。」
「良い投資先が知りたい。」
「睡眠を三日間我慢せよ。」
「もっと頭がよくなりたい。」
「水分を三日間我慢せよ。」
他にもたくさんの願い事をした。
「
彼女が心配そうに
「ん?ああ!ごめんごめん!ちょっと仕事のこと考えちゃった。」
「なーんだ。あんまり
「うん。ありがとう。さ!食べよう!」
(優しい子だな。欲しいものは全て手に入った。俺は…幸せだ。幸せなんだ。)
「もっと幸せになりたい。」
寒空の12月。休日に散歩にでかけると、
「着いてこい
いつもならば、望みの後に何を我慢すればいいのかすぐに教えてくれるのだが、今日は様子が違う。
「なぁ三日坊主、どこに行くんだよ。」
三日坊主は何も答えない。移動すること30分。到着したのは人気のない町の
「到着だ。」
廃ビルの一室。そこには、
ナイフ、包丁、電動ドライバー、ノコギリ、鉈、ブロック塀…。全部で13種類。
「なんだよ三日坊主…。俺に…、俺に何をしろって言うんだよ!!」
「えへへ、13個だよ、じゅうさんこっ!!」
廃ビルに響く少女の声。振り返るとそこには
正体が明かされる女性。
「わくわく仕返したーいむ!!いじわるママに仕返ししちゃお!」
母親と目が合う
「もっと幸せになりたければ、『13の道具を使って母に仕返しする罪』を三日間我慢せよ。」
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