三日坊主 2/4
「母親から一人暮らしの許可を得たいならば、『
野太く、無機質な声はカバンの方から聞こえてくる。カバンを開けると、中から飛び出してきたのは、白い少女からもらったお坊さん人形『
「うわぁ!」
勢いよく飛び出した三日坊主は、
「ちょっと
「な、なんでもないよ!ちょっと虫が出ただけー!」
「夜に大きな声出しちゃだめよー!」
「わ、わかってるー!」
肩に乗った三日坊主を取ろうと試みるが、どれだけ力をこめようと全く取れない。まるで接着剤で固定されているようだ。慌てる
「
「間食を…我慢?おやつを食べないってことか…?そんなことで、母さんから一人暮らしの許可が出るわけないだろ!?」
「出る。」
「わ、わかった。間食を三日間我慢すればいいんだな?それくらいだったらやるよ。」
「あいわかった。」
「これより72時間後、7月26日の23時32分44秒まで間食を禁ずる。
「相応の罰…って?」
「罰は望みの大きさによって変わる。小さな望みには小さな罰を。大きな望みには大きな罰を。」
(一人暮らしをしたいだけだ…。もし罰が下っても大したことないよな…?いや、そもそも、間食をしないなんて楽勝だよ。)
こうして、
次の日。
「そうだ三日坊主。今から電車だから、カバンやポケットの中に隠れてくれないかな?さすがに人形を肩に乗せてると不審がられるし…。」
「案ずるな
半信半疑のまま駅に行く。三日坊主の言葉の通りで、スーツ姿で坊主の人形を肩に乗せている男に誰も目もくれない。
(ということはさっきの俺の言葉は全部ひとりごと…?気を付けないと不審者と間違えられかねないな…。)
妙にそわそわしながら会社に到着。朝礼を終え、上司に激を飛ばされ、外回り。一通り営業を終えて帰社。
(忙しいし、間食しないくらい我慢に入らないな。)
疲れた顔をしながら仕事をしていると、事務員のおばちゃんが話しかけてくる。
「望月君、外回りお疲れ様。これ、私の叔母からもらったお菓子なの、どうぞ。」
おばちゃんはそう言ってお
「いいんですか!僕、
仕事で疲れた彼の体は甘いものを欲していた。饅頭を手に取ったその時、三日坊主の顔を見てハッとする。
「す、すみません。今、ちょっとお腹の調子が悪くて…。遠慮しておきます…。」
「あらま!大丈夫?しんどかったら早退するのよ。」
「はい。お気遣いありがとうございます。」
おばちゃんは心配そうな顔のまま自分の机に帰っていく。
(自分が我慢するのは楽だけど、人に嫌な思いをさせるのは心苦しいな。)
自分に親切にしてくれる人に嘘をついた罪悪感に苛まれる
「
自室にて、三日坊主がそれだけ告げて目を閉じた。
「一人暮らしがしたい?いいわよ。
ポカンと開いた口が塞がらない。三日前とはまるで別人だ。
「最寄り駅とか決めてるの?会社に近いと便利だけど、あそこらへんは家賃高いわよ。」
(このおせっかいさは母さんそのものだ。母さんは母さんのまま『俺が一人暮らしをすること』を許している…。)
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