第74話均衡の町
ラビィは均衡の町に行くことにした。
心配そうに見つめるお母さんとモカに
「大丈夫、かたち格好良くなって戻るよ。」と言って、自転車で出かけた。帰りに郷土菓子、均等ケーキでも買って帰ろうと、浮かれ気分で自転車をこいだ。
しかし、そんなラビィを町が問題でもって迎えた。
均衡の町に近づくにつれ曇り空になり、均衡の町に入ると真っ黒な暗雲と、しかめつらのすっかり冷え込んだ太陽が、空にあった。
どうしたんだろう。と思いながら、小さい頃、よく繕い物のお使いに行った縫製屋さんに、ラビィは入っていった。
ラビィは、やれ懐かしいだの、やれ大きくなっただの、縫製屋になでられながら体をきちんと縫製しなおしてもらった。
「ところでこの町天気が悪いけれど、どうかしたの?」ラビィが店の暖房を見て言った。冬でもないのにぼうぼうとたかれている。「さあ、どうしたんだろうねぇ、事情は、町長さんなら知っているんじゃないかな、冷えてたまらないよね。裁縫の針を持つ手がかじかむよ。それでも仕事を休むわけにはいかない。さあどうだい。出来は。均等に出来ているかな?」
ラビィは縫製し直された自分の体を見た。いつもの丁寧均等な縫製、良い仕事だった。「うん!きれいな出来、ありがとう!」
ラビィはお金を払って店をでた。
ぶるっ、寒さがしみる。
ラビィは均等ケーキを買おうと、広場のカフェまで行く。
カフェでケーキを注文して待っていると、広場でなにやら小さな男の子と、大人数人が、空を仰いでなにかをつぶやきあっていた。
ラビィは興味を引かれてそこへ行くと、「お願いです太陽さん。」という声が聞こえてきた。
ラビィは、ますます興味をひかれて「何をしているんですか?」とその集団に向かって聞いた。
「どうも、いやね、この子が晴れの日に、平等に雨も降れなんて言ったもんで、太陽さんがあの通りになってしまわれたのですよ。」「プランターの芽が出てきてつい、なんだよな?」大人たちが言った。
すると男の子がうなずく。
「そうだったんだ。」ラビィがうなずく。「こうなれば、太陽のおまつりでもやるしかないですかねえ。ねえ、町長。」
呼びかけられた大人が「うーむ。」とうなった。それにつられるように大人たちがうーむ、と腕組みし合う。一方横でうんとうなずいたラビィは、唐突に太陽に話しかけた。
「そんなしかめつらしてないでさ、」
ラビィは凍えるのをがまんしながら説得した。太陽は言う。
「ふん、ならなにかおもしろいことでもしてみろよ。オレは照らすだけ、みんなは暖かけりゃそれでいい、オレといったらおもしろいことのひとつもない。」
その言葉に、ラビィは耳をふわふわさせてみせる。
相変わらず太陽はしかめつら。
「ふーん、なら太陽さん、かなり小さな的だけど、僕の銃の腕で太陽さんに風穴をあけてみせようか?」
「ほー!おもしろいことを言う。やれるもんならやってみな・・・」
太陽が言い終えるかしないかそのうちに、ズッキューンとものすごい音が鳴り響いた。
太陽は、プロミネンスの輪だけをはためかせ
てしばらく茫然としていた。
やがて炎が戻ってくると、太陽は、あっはっはっはと大口開けて大笑い。
「まいったまいった。すごい腕だなぁ。良い風だった。」
ラビィは銃を人差し指でくるんとまわして腰に戻す。
「太陽さんの笑顔いただいたー。暖かー。」わっ!と広場が沸く。
よくやってくれたとラビィは集団になでられてもみくちゃにされる。
「やーやー、やーやー。」
それをひとりの大人がおさめて、ラビィの方にずいとふみだし、手を差し出した。
「ありがとう。ありがとう。おかげで均衡の町に本来の太陽が戻りました。私は町長です。なにかお礼を、おや?」
握手しようとしたラビィのうでに町長の目がいった。
ラビィがそれに気がついて言う。
「いえ、良かった。それじゃあお言葉に甘えて、この手錠をはずしてください。日本国という国で無実の罪でかけられたものなんですが・・・なんて、冗談ですよ。これ、切ろうが叩こうが壊れなくて・・・。」
ラビィはほとんどやけで、もうすべてがジョークだった。
しかし・・・
「それなら、あなたに手錠のキーをさしあげましょう。」町長が言った。
「ええっ本当?鍵があるの?」
おもわずラビィの両耳がピンとたつ。
「例えです、きみ、きみ、いらしてください。」
大人たちがくすくす笑う中、奥から一人の男性が現れてラビィに手を振る。
「やあ今回のことは本当にありがとう。」
町長が言う。「均衡の町の主要産業は天秤業、弁護士業。これは私の補佐で、弁護士を兼任している。凄腕だ、きみ、裁判に勝って手錠をはずしてもらうんだよ。」
ラビィは正攻法すぎて言葉が出なかった。
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