第72話アットホーム
ぐぐーんとスピードを落として、降下しだし、ラビィの耳もふんわりなびく。
そしてついに目的地、ラビィの家、フラッフィ家に到着した。懐かしい我が家、旅に出てどのくらいだろう。
暖かそうな木造の、窓にはステンドグラスがはまった一軒家である。
ラビィは流星の精にありがとうの握手をして、家の玄関ドアに走って行った。
弟にブドウを!
高鳴る胸をどうどうなだめて、玄関ドアをノックした。
トン、トン。
「ラビィだよ。今戻ったよ。」
・・・ガタ・・・パタ、パタ、パタ・・・
ガチャリ。
「ラビィ?」玄関ドアは開かれた。
そこに立っていたのはお母さんだった。
「ただいま。帰ったよ。」
ラビィはお母さんにただいまの抱擁をしようとする。
けれど、
ガシャリ・・・。
「まあラビィ、その手、その体、その手錠、一体どうしたの?」ラビィの体は強盗に襲われてつぎはぎだったし、手にかけられた手錠が抱擁しようとするのをはばんだ。
ラビィは口ごもる。
「・・・ちょっと、色々、あってね。・・・それより、モカは?いいものを持って帰ったんだ!」
ラビィのお母さんは「それより」という気になれないという顔をしていたが、まあ入りなさいな、モカならベットよ。と家の中に迎え入れた。
「モカ!」
モカはベットに潜っていた。
ラビィはそこにかけよる。
「お兄ちゃん、どうしたの、それ。元気なの?」
ラビィは笑った。
「気にするな、元気さ。それに、お前も今に元気になるさ。」
モカははてなという顔をした。
「モカ、これを!」
ラビィは例のブドウをだしてモカの目の前に差し出した。
「食べるんだ。未熟で甘くないけれど、実は元気になる特別な魔法のかかったブドウなんだ。さあ。」
「特別な、魔法?」モカははてな顔に拍車をかける。
「食べてからのお楽しみだ。さあ。」
モカはラビィの勢いに押されて、目の前に差し出された未熟なブドウをまじまじ見ながら、恐る恐る口にする。
ぱくり。
モカが目を閉じて口をむしゃむしゃさせる。そして、
ごくり。
ブドウを飲み込んだ。
ラビィがモカの顔をのぞきこむ。
「どう?」
モカがゆっくり目を開く。
「なんだろう・・・あれ?・・・わあ、なんだか、だるさが軽く、頭痛が引いて・・・魔法なの?」
ラビィがやったと飛び上がり、お母さんがまあ、と口に両手をあてる。
「一生分の治癒魔法をかけてもらったブドウだよ。治ったも同じだよ。」ラビィが言う。お母さんが、まあ、まあ、としゃくりあげ、モカに抱きついた。
「そんなたいそうなもの、どうやって手に入れたの。」
お母さんが振り向いて言う。
ラビィはふふ、と口角をあげて笑う。
「旅を、してきたのさ。」
「どんな旅?ねえねえ聞かせて!聞きたいよね、お母さん。」
モカが元気な声で言う。
「そうねえ、それならみんなで夕食にしましょう。そしてお話しを聞かせてちょうだいラビィ。」
お母さんが優しいまなざしでモカを見、ラビィを見る。
「いいともさ!お母さん、夕食はニンジンシチューが良い。」ラビィは言った。
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