第61話フルールジャム
ラビィがふところ温かく、幸せに中央銀河の大通りを歩いていると、
「きみきみ、いいにおいがするね、バックの中身はなんだい?」
いきなりお菓子屋に呼び止められた。
ラビィは一瞬はてな顔になったが、バックの中をまさぐって、やがてああと納得した顔になると、今までもらってきた色々な花たちの花びらの入った子袋をだした。
色々な花の香りがまざって、不思議な甘い香りのするポプリになっていた。
「良い香り。」お菓子屋がうっとり言う。「ジャムにしたらきっと最高だ。枯れて香りが飛んでがっかりするよりも、香りの高いうちに味わって、それを一つの最高の思い出にする。どうだい、手錠うさぎさん。」
ラビィはその言葉を聞いて心が動いた。思い出は枯れない。(それにラビィは甘いものに目がない。)
ラビィがうなずくと、「決まりだ。」と言って、お菓子屋は鍋に砂糖を入れてジャムを作り始めた。
花びらを入れて、鍋をかきまぜている間、立ち上る湯気は花が咲き乱れている様だった。しばらくすると甘い香りがたちこめて、間もなくジャムはできあがった。
菓子屋は気を利かせてトーストを焼いてくれた。
ラビィは出来上がったジャムをトーストにたっぷりつけて、さくっとかじった。
色々な花のかぐわしい香り。
言葉の庭のバラたち、ハイヒールフラワー、高山のささやく花、花編みの花飾り・・・花々との出会いを思い出す。
「一日置くと味が落ち着いておいしいよ。」菓子屋がジャムを瓶につめてくれた。
「ありがとう。花たちとたくさんであったらまたくるよ。」
ラビィはジャムを大切にしまった。
「ああ、またすばらしい香りを味わわせてくれ。」
菓子屋はまだたちこめているジャムの香りにうっとりしながら言った。
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